文春オンライン

『ドライブ・マイ・カー』は作品賞を獲れる? 現地を知り尽くす“専門家”の本命は…《2022年アカデミー賞予想》

町山智浩×猿渡由紀×Ms.メラニー

note

猿渡 私は『パワー~』にアンチ・ゲイを感じなかったのでバックラッシュになると思わないんですけど、評価されてる割にものすごく好きって人があんまりいないんですよね。いい映画だけど、影では「なんだったの?あれ?」って声も結構聞くし。私も文句なく好きなのは『コーダ あいのうた』なんですけど、オスカーは青春ものとSFにあまり優しくないので、ちょっと弱い気がします。

猿渡由紀氏。現地に住んでこそわかる肌感覚も踏まえて予想

町山 もし『パワー~』が獲ると、ネットフリックス作品が初めて作品賞でオスカーを獲るという歴史的なことになりますよね。アメリカのプロデューサーが今までの既成の映画会社とうまくやっていくか、それともネットフリックスの方に一気に行っちゃうか、ハリウッドに大きな地殻変動が起こる。

猿渡 『ROMA/ローマ』(18年)の時は、なんとか阻止しましたからね。

ADVERTISEMENT

メラニー この3年間で何がどう変わったのかを考えると。

猿渡 すべてが変わりましたから。

町山 コロナでね。

「映画は劇場で」からの変化

メラニー ネットフリックスの立ち位置は明らかに3年前より強くなっていて、「映画は劇場で見なきゃ」と反対していた監督もネットフリックスで映画を作ったり、ハリウッドの皆さんの感覚がどれだけ変わったか試す機会ですね。

 結局『ROMA』は外国語映画だからとか、白黒だからとか、素人の役者を使ってるからとか、いろんな理由を言われたけど、翌年から外国語映画の『パラサイト 半地下の家族』(19年)が獲ったり、素人を使った『ノマドランド』(20年)が獲ったり、あれはやっぱりネットフリックスだったからなんだなってすごく思うんです。今年それが変わるのかどうかは、映画会社で働いている自分にとっても大きいことで。

週刊文春CINEMA!」は現在発売中

町山 アメリカにも日本の全興連みたいな組合があって、ラスベガスで毎年やってるイベントにプロデューサーたちが行って「あなたたちをないがしろにはしません、我々は全興連の人たちあってのハリウッドです」ってアピールしなきゃいけないんです。立場としてネットフリックスに獲らせることはできないし、獲ったら歴史が変わるような状況です。

関連記事