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 マイクを回すパフォーマンスはおそらくロック好きの志村さんのアイディアだと思うが、後年、収録取材の合間にスタジオ袖で志村さんと雑談を交わした際、「あのマイクぐるぐるが大好きでよくオモチャでマネしてました」と申し上げると

「あれなー、イマイチうけなかったんだよね。やっぱ犬が弱かったのかな? 犬を猫に替えて[にゃんダー・キャット]とかいってまたやってみようかな?“にゃん にゃん にゃん にゃにゃん”とか歌って」

 と、私もその場にいた他の記者も笑わせていただいた。これ、文字で見る以上に志村さんの生トークで聞くとホントに腹の底から笑えてしまったので、さすが一流の“志村流”、“志村術”というところだと思う。

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 以来しばらく、テレビで「にゃんダー・キャット」が歌われる日を密かに期待していたのだが、当然のことながらついにその日が訪れることはなかった……。

「いきなりやったもんだから女の子に後ですっごく怒られてね…」

『ドリフ大爆笑』(’77~’98年)も志村さん活躍初期の、『全員集合』と並ぶ2大ヒット番組だが、その主題歌「ドッドッドリフの大爆笑~~♪」も当時の小学生みんな……と言っても過言ではないくらい口ずさんでいた。

 第二次大戦の戦前~戦中期に日本の津々浦々で歌われた「隣(となり)組」の替え歌だが、スーツ姿のドリフ全員が横並びで歌い、華麗なるダンス集団・スクールメイツが歌に合わせて踊り舞うオープニングはいつでも目に浮かぶ。

 そのオープニングで、志村さんは一時期、踊り終わった後、自分の右手前でポーズを取っているダンサーの女性を後ろから突き飛ばす、というアドリブをひとり行っており、これがまた当時の悪ガキ小学生男児にはうけた(突き飛ばされていたご当人には大変申し訳もない次第だが)。

 あるとき、この『大爆笑』収録取材の折に、志村さんにそのことを申し上げると、

「あれね? いきなりやったもんだからあの女の子に後ですっごく怒られてね。“ごめん、ごめん”って言って確かフジランド(当時フジテレビにあった食堂)でなんかおごったんじゃなかったかな?」

 と仰っていた。しかし後年、番組スタッフにお話を伺ったところ、

「いや、あれはアドリブじゃなくて、リハのときに志村さんが言い出して、ちゃんと打ち合わせした。ちょっかい出す子も決めてから録ったんじゃなかったかな? あれに関してはアドリブじゃなかった筈だけど?」

 とのこと。もはや真相は藪の中だが、女の子に一生懸命謝って、食堂でご馳走している若き志村さんのお姿を想像するだけで笑みがこぼれてくる。