ーーお話を伺っていて思いましたが、三橋達也さんが付き人ぶりを絶賛したり、小堺さんと関根さんに“クドさ”を見出されたり、テリーさんに抜擢されたり……なにかこう、ルーさん自身が気づかなかった魅力を周囲に引き出してもらってきたところがありますよね。
ルー それは否めないですね。特に50歳を過ぎてからは、増田についてもらって二人スリー脚っていうの? それでやってこれたしね。マウンテンの時もバレーの時もあって、気がついたら68歳ですよ。でも、それもこれも僕ひとりの力じゃないので。
やっぱり横に誰かがいて、客観的に見てくれて、操縦するわけじゃないけど、ナビゲートしてくれる参謀みたいな人がいないと。それに、当然、こっちも参謀の意見を受け入れる弾力性がないとダメだよね。
その両方がないと、「俺が俺が」って自分のことだけになってクレイジーになると思う。売れれば売れるほど、だんだん人の言うこと聞かなくなるもんだしね。
増田 あとは楽しくやれれば。
ルー 今日、まさしく彼とそんな話になったんですよ。「僕もルーさんも、あと何年やれるかわからない。だったら、やれる間は楽しくやっていきましょうよ」って。いい日もあれば悪い日もあるけど。ちゃんと与えられたものを頑張っていくことによって、広がっていくし、楽しくやっていけるからね。
人を攻撃するのは好きじゃない。いまのほうが絶対いい
ーールーさんの芸風って非常にクドいものの、あくまでジェントルでエレガントですよね。発言もポジティブなものばかりだし、ことあるごとにハグしたり。けっして、他者をイジったり、傷つけたりして笑いを取ることがない。
ルー やっぱり時代というのはあるよね。昔はみんなが誰かをけなしたり、セクハラみたいなことをしてたじゃない。僕は基本的には人を攻撃したりするのは、あまり好きじゃないから。なので、いまの笑いや表現の仕方は好きですよ。いまのほうが絶対にいいと思う。
昔は品のないことも多かったよね。取材の時に、「これカバンに入れて下さい。あとで突っ込みますから」なんてエロ本を渡されたりして。「なんだよ、それ。僕はこんなの読んだこともないよ」って、ちょっと気分が悪くなっちゃったこともあったよね。
増田 昔はドギツイことをやってくれって言われましたからね。いまは、ほんとにそういうことないです。だから、面白いものを作れなくなったみたいな声もあがるんでしょうけど。
ルー 昔からいる芸人は、それが嫌なんだろうな。ほんと、スタッフ同士で殴り合いなんて当たり前だったもん。そんなの見せられたら、こっちだって萎縮しちゃうじゃないの。テレビだけじゃなく、舞台でも映画でもそんな感じだったけどね。
ーーだからこそ、ルーさんの「トゥギャザーしようぜ」ってワードが、いまの世にものすごく響くと思います。
ルー そうなのよ。ロシアとウクライナね。プーチン、もう抑えが効かなくなっちゃってるよね。ある時期から顔が変わったような気がするもの。 さっきの話じゃないけど、参謀的な人間の話を聞かないでさ、「俺が俺が」なんてやり続けてるとああなっちゃう。僕と増田を見習わないといけないですよ。
なんか聞いたら、プーチンって69歳なんだって? 1年先輩だよ。僕が高1のときに高2じゃないか。まったく、しっかりしてほしいよね。
写真=石川啓次/文藝春秋