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 妹が見つけてくれたツイッターの良いコメントを読んで、私はただただ泣いた。うれしくて。それらのコメントをノートに書きこんだ。そのときから不安になったり自信がなくなったりすると、そのページを開き、励まされている。

テレビ出演に「なんだかめんどくさい」

『おちゃめに100歳! 寂聴さん』を出版してから、先生は「まなほのためならなんでもするよ!」と言ってくれた。そして同じ時期に先生の小説『いのち』も出版されたことで、一緒にテレビや雑誌などの宣伝に力を入れた。「先生は自分のためにはテレビに出ないのに、まなほさんのためならってすごくテレビに出てるね」と『いのち』の前に小説を出版した編集者が悔しがっていた。

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「まなほのためならなんでもするよ!」と、瀬尾さんのために普段は出ないテレビに出てくれた瀬戸内寂聴さん。©朝日新聞出版

 テレビに出るとその瞬間、本の売り上げが動く。何百位だったランキングが10位以内に急上昇する。テレビの凄さをあらためて感じた。

 先生は「秘書のまなほが私の悪口を書いた本です」と宣伝してくれた。テレビの撮影では本の内容にそって、先生と私のやりとりや、先生がお肉を食べ、お酒を飲むところ、私が先生のメイクをするところ、私が不慣れな様子で料理を作るところなどが希望された。

 最初はなるべくそれに応えていた。ただどこも同じようなことを希望するので、だんだん毎回対応するのが負担になった。テレビでは演出なのか、まるで私一人が必死になって料理をしたり、掃除をしたりするように映っている。

 しかし、寂庵にはスタッフが3人いて、料理がうまいベテランのスタッフもいる。それを知る人が他のスタッフたちのために、「まるで、まなほさん一人でしているようだ」と先生に伝えた。先生はそれ以降、「まなほはなんもしないの。他のスタッフがするの」と、他のスタッフを気遣って撮影時にあえて言うようになった。私も「密着は負担になるので、密着以外でお願いいたします」と返事をするようになった。なんだかめんどくさいなって思った。

「秘書は人前に出るべきではない、影武者でいろ」と公衆電話から電話をかけてきた年配らしき男性の声。はがきで、「まなほさんは顔もキツそうなので性格もきっとキツイのでしょう」と書いてくる女性。寂庵に実際に来て、「あんたいつか祈り殺されるよ」という年配男性。私はその都度、傷ついていた。

 私の本が売れ、露出が増えると身近な人間からも嫌がらせをされた。「この人が?」と思うような人からも……。