福祉政策ではなく「政局に」する
――どうしたら、誰でも入りたい保育園に入れるようになりますか?
本目 保育園を増やすしかないですね。ただ、これから人口が減ってゆく中でどこまで増やすのか……。0歳児の保育料を試算すると、自治体によって試算が違いますが、1人あたり月20~60万の税金がかかっています。財政と相談しながら進めていかなくてはいけません。
上田 保育園を福祉政策の一環でやろうとすると、おのずと限界があります。私は、小池百合子都知事を動かして「政局」にしました。もしかしたら小池都知事は保育園に関心がなかったのかもしれませんが、現場を見てもらった上で予算をつけていただきました。
結局、保育政策は労働問題であり、財政問題です。福祉やジェンダーの問題だけではありません。労働人口を増やして、納税者を増やすために何ができるのか。離婚をしても、働いている女性は納税者であり続けます。専業主婦だと生活保護になって、税金を使う側になってしまうケースも多い。そういった観点から政局にすれば、誰も反対できなくなります。
――地方議員としては具体的に何ができますか?
伊藤 若い世代の話を聞くと、保育園を望んでいる人と、そうではない人がいます。子どもを保育園に入れなくても、近所の祖父母に預けるとか、他の方法があります。幅広い選択肢を提供することが行政の務めだと思います。最近、保育バウチャー制度(保育園ではなく、保護者に補助金を出す制度。保護者が自由に保育園を選べる)も、都では一部実現しました。
本目 今年は2015年に実施された子ども・子育て支援新制度の中間年度になります。もうすぐ次の計画の見込み量調査(利用希望把握調査)が行われますので、待機児童などのニーズをどう修正していくのか。今後の議会でしっかりチェックしていきます。
例えば、新宿区には24時間保育園がありますが、台東区では遅くて22時までの保育施設しかありません。お互いに夜勤をする夫婦だったら、夜は子どもを置いて働くしかない。現在、夜間保育所は全国に81カ所だけ。24時間保育の是非はまた別途議論するとして、こうしたニーズ調査も細かく行う必要があります。
上田 仲間がいなければ大きな動きは作れませんから、「保育族」は増やします。今度の統一地方選では、財政をチェックしながら、ハコモノに回す予算を切って保育に回すことができる議員を1人でも多く当選させたい。先日行われた葛飾区議選でも、シングルマザーの候補を1票差で当選させることができました。
伊藤 そうですね。私は区議会では一人会派で活動しています。議会活動では多数派形成がうまくいかないときも、間接的に都議会や社会全体に訴えかけることもできる。実現したい政策をうまく説明できれば、他の会派からも共感してもらえると自信を持っています。
本目 保護者の方は「行政ががんばってないから、希望する保育園に入れない」と感じているかもしれません。ただ、行政は敵じゃないという点はお伝えしたい。もちろん行き届かない点は多々ありますが、なるべく相談にも乗りたいと考えている職員が大半です。それでも話が通じないなら、ぜひ議員を使ってください。個人的に保育園に押し込むのは無理ですが……。
伊藤 将来的に保育の環境を良くするためにも、私たちが住民の声をきちんと議会や行政に伝える役割を果たしていきたいと思います。
【12/11追記】「とちょう保育園」を「認証保育園」とした発言は誤りでした。正しくは「認可保育園」です。訂正いたします。
写真=榎本麻美/文藝春秋
※編集部注:保育園の入園に関わる制度や点数計算の方式は、自治体によって異なります。正確な情報は、必ず自治体にお問い合わせください。