2018年、拘留中だった樋田淳也被告が大阪府警富田林署から逃走し、窃盗を繰り返していた事件。最高裁判所は3月28日、「社会に不安を与え、逃亡中にも罪を重ねた」と、上告を退け懲役17年の判決を言い渡した。
強制わいせつ、強盗傷害をはじめ、併せて21もの罪に問われていた樋田淳也被告。逃走中は「日本各地を走り抜けます」などと語り、逮捕後もほとんどの事件で無罪を主張していたという。一体どのような人物だったのか。逃走中の大胆不敵な行動を報じた「週刊文春」の記事を公開する。(初出:週刊文春 2018年10月11日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
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大阪府警の顔に泥を塗った逃走犯
小麦色の肌にサングラス、サイクリングウェアを纏い、瀬戸内を颯爽と駆け抜ける青年。この男こそ、必死の捜査網をすり抜け大阪府警の顔に泥を塗った逃走犯・樋田淳也容疑者(30)だった。周囲にはぬけぬけと、こんな宣言までしていた。
「日本各地を走り抜けます」
48日間に及んだ前代未聞の逃走劇は、誰も予想しなかった形で幕を閉じた。
舞台は山口県周南市の道の駅「ソレーネ周南」。事務局長がその日を振り返る。
「9月29日の夕方、雨の中来店した樋田容疑者は黒の帽子にサングラスで、万引きGメンはすぐに怪しいと思ったそうです。パンやお餅の袋を次々服の中に隠して店を出たところで声を掛けた。警察官が到着すると暴れたので、3、4人で押さえて手錠をかけ、それでも足をバタバタさせるので足にも手錠をかけられていました」
捜査関係者を驚かせたのは、その大胆不敵な行動だ。
「樋田は愛媛県四国中央市で出会った旅行者(44)と行動を共にし、自転車2人組での日本一周旅を装っていた。府警の取り調べには『全て黙秘します』とふてくされた様子です」
逮捕3日前まで2人が宿泊していた道の駅「サザンセトとうわ」の支配人の話。