プロ野球を引退した第二の人生は、所属していた球団の“経理部”だった――。
この不思議ともいえる転身。野球選手が引退後に球団で仕事をする場合、スコアラーやスカウト、バッティングピッチャーやジュニアチームの指導者など、いわゆる“野球の現場”で働くのが通常なのだが、元横浜DeNAベイスターズの投手だった笠井崇正さんが現在所属しているのは、同球団の経理部である。
現場ではなくバリバリの事業系内勤。昨年引退し、今年1月から業務をスタートさせたフレッシュマンである。
「何でそんなにキーボードが早く叩けるんだろうって…」
「やりがいですか? うーん、正直まだというか……。教えてもらいながらの作業なので、そこに面白味を感じられる段階ではない状況です。目の前の業務をやっていくことだけで手一杯ですね。パソコンもまだまだですし、まわりの人たちはカタカタと、何でそんなにキーボードが早く叩けるんだろうって見ています」
笠井さんは、そう言うと苦笑した。
「今は従業員が個人で立て替えた経費の確認であったり、会社としての債権、債務の請求書の内容の確認。あとは入社したばかりなので、会社のことについて知ることが業務になっています」
去年の今頃は開幕ブルペン入り…いま、経理部から見える風景
去年の今頃は開幕ブルペン入りして、一軍の試合で投げていた。だが現在は事務職として、見たことのなかったDeNAという球団の内側を目の当たりにしている。
「初めて知ることがたくさんありました。これまではチームサイドのことしか見ていなかったのですが、球団のビジネスサイドやチームに対するサポートなどまったく知らないことばかりで、どういった売り上げがあるのかなど本当に新鮮で勉強になっています」