病院内にユニクロの店舗をオープンしたきっかけは「済生会中央病院からの要望」だった。
ではなぜ、済生会中央病院は病院内にユニクロをオープンしようと考えたのか? また、病院内の店舗と言えば、コンビニやレストラン、カフェなどが一般的だが、病院内の店舗に関する、病院側の考え方は変わりつつあるのか?
東京都済生会中央病院の担当者にも話を聞いた。
――病院内にユニクロの店舗をオープンしようと思ったのはなぜ?
当院では意見箱を設置して、広く職員に、病院をよりよくするための意見やアイデアを求めています。
2020年1月、職員から「院内にユニクロがあったら、急な入院で衣類を持って来ていない患者さんが助かるのではないか」という投書がありました。
以下は、投書の要約です。
入院された患者さんが下着などを持ってないことがあり、また院内を検査で歩かれる際に羽織るフリースのようなものも必要です。
大掛かりな店舗ではなく、東京駅にあるような小さな店舗で十分だと思います。
患者さんが退院時にもう必要ないと思われるならユニクロリサイクルボックスに入れて退院されれば、ユニクロを通じて社会貢献もできると思います。
この投書がきっかけで、ユニクロとの話し合いが始まりました。病院の中にユニクロをという発想は、私たちの中にまったくありませんでした。
それだけに、面白いかもしれないと思いました。
――職員の方の声をきっかけに、その後、どのような経緯で出店が決まった?
2020年2月、当院の企画課の担当者がユニクロのカスタマーセンターへ問い合わせを行ったところ、当院へ連絡をいただき、話し合いが始まったと聞いています。
話し合いはスムーズに進んだのですが、ちょうど、新型コロナウイルス感染症がまん延の時期でもあったことから、オープンの時期について決定するのが難航しました。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大によって、ユニクロとのつながりが深くなった側面もあります。たとえば、乳児院でクラスターが発生したとき、ユニクロから多大な支援をいただきました。そして、衣服がもつ「人を元気にする力」を実感することができました。
こうして、最初は「患者さんの利便性」のためのユニクロ出店でしたが、より大きく、衣服がもつ「人を元気にする力」を、人が健康になることに役立てられないかと考えるようになりました。