新年早々、任地の日本を出国した中国の孔鉉佑駐日大使が、3月30日に日本に戻ったと外務省が確認したことがわかった。隔離期間を経たのちに執務を再開するとみられている。
出国は1月6日だったため、日中国交正常化50周年という節目の年に、駐日中国大使が約3ヶ月もの長期間、任国を不在にしたわけだが、この間、ロシアのウクライナ侵攻で台湾海峡の平和と安全に対する日本社会の関心は急速にたかまり、安倍晋三元首相と台湾の蔡英文総統とのオンライン会談も実現。
日台の接近に神経をとがらせる立場の孔氏にとって、頭の痛い状況での執務再開となりそうだ。
「いつ戻るかはわからない」から一転……
孔氏の再入国について、駐日中国大使館への取材では広報部担当者は「答えられない」としたが、外務省中国課は4月1日に「一昨日(3月30日に)戻ったと聞いている」と回答。隔離期間を経て4月半ば以降職務に復すものとみられている。
孔氏の長期不在については、筆者が3月はじめに駐日中国大使館をはじめ周辺関係者などへ取材し、『「年明けから姿を消した」駐日中国大使が2ヶ月間も行方不明に…ナゾの異常事態に潜む“習近平の思惑”』の見出しで3月4日に報じて以降、日本のチャイナウォッチャーらの関心事となっていた。
同記事での大使館広報部への電話取材時、担当者は「一時帰国中なのか」との筆者の問いに「そうだ」と回答。また「病気なのか」との問いには否定したものの、不在理由については明かさず、大使の職務に復帰する期日のめどについては、「いつ戻るかは、私どもではわからない」の一点張りだった。
ただし、これに依拠した報道の直後、駐日中国大使館は態度を一変。「全人代などのための一時帰国で、3月末には戻る」と抗議姿勢を示した。皮肉なことに、この不自然な大使館広報部の姿勢の変化が、かえって孔氏の出国が通常の一時帰国ではないのではないか、との憶測を呼ぶ結果となっていた。
日本政府も詳細を掴めず
孔氏の任国不在は3月10日、参院予算委員会集中審議で野党議員が政府の外交姿勢に関して質問した際にも取り上げられている。
林芳正外相に対し、白眞勲参院議員(立民)が「いま中国大使は日本にいるのか」と質したところ、林外相は「1月6日から日本を不在にし、この間、楊宇公使が臨時代理大使となる旨、駐日中国大使館からは通報を受けている」と答弁。
「不在理由については把握していない」「大使が任国を離れる際には不在の通報を行うことになっているが、一般的慣行としてその理由を述べるということはない」などと続け、孔氏不在の理由などの詳細について日本側に情報がないことを明らかにした。