「衆議院は極めて悪質」「中国人民に対する政治的挑発」
当初「失脚」や「病気」とも取りざたされた孔氏の任国不在。「大使館メッセージ」を詳細にみると、大使館が絡む対日交流行事や楊臨時代理大使と日本の要人との面談記録以外に、日本の外交姿勢に踏み込んだ意見表明なども散見され、大使館が対日関係の進展で思うような成果があげられていないことへの焦りも垣間見られた。
例えば2月1日に掲載された「駐日中国大使館報道官、日本衆議院のいわゆる人権決議採(※ママ=採択の意か)で談話発表」では、「日本の衆議院は中国の厳正な立場を顧みず、いわゆる中国に関わる人権決議を採択することに固執し、事実・真相をわい曲し、偏見とうそに満ち、悪意をもって中国の人権状況を中傷し、中国の内政に乱暴に干渉し、国際法と国際関係の基本準則に重大に違反し、極めて悪質である」
「日本の一部政治屋が国と国が付き合うモラルを顧みず、いわゆる決議を強行にまとめたことは中国人民に対する重大な政治的挑発であり、中日関係の大局を重大に壊すものである」などと、激しい語調で不満を表明している。
「第15回中日省エネルギー・環境総合フォーラム」が盛大に開催され、全体会議で挨拶しました。中日両国が連携を深めてグリーンな未来を切り開くことが、新しい時代に求められている中日関係のあり方だと、多くの方々と考えを共有できました。 pic.twitter.com/lQe2VV5IdI
— 孔鉉佑 (@AmbKongXuanyou) December 26, 2021
また「中日国交正常化50周年に寄せる署名文章を発表」(日本語版は3月9日掲載)で紹介された孔氏の署名文章全文のなかでも、「相互尊重」や「内政不干渉」、「確約の厳守」「協力」などを掲げたうえで、次のように述べている。
「日本側は歴史や台湾などの重大な原則問題において確約を守り、正道を踏み外さず、一線を越えないことを確実なものにして、両国関係の政治的基礎を守らなければなりません」
「日本側が対中協力において、より自信を持ち、開放的で、寛容な姿勢を示すことを願っています。中日の競争対抗を誇張したり、中国の発展を抑圧することを吹聴する、消極的な論調に影響されて進む方向を誤らないことを願います」
このように、日本側に釘を刺すような表現が目立っているのだ。
北京五輪「外交的ボイコット」への反応
孔氏の出国直前だった昨年12月には、22年2月に開幕をひかえていた北京冬季五輪に先立ち、新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港での中国政府による人権侵害を念頭に、英米などが外交的ボイコットを決定。
日本もこれに歩調を合わせるかっこうで「基本的人権の尊重など普遍的価値は、中国においても保障されることが重要」などとして、政府代表団を派遣しない事実上の外交的ボイコットを決定していた。孔氏にとって本国の手前、面白くなかったことは想像に難くない。