また、少年だけでなく、青年もひとたび特殊詐欺で検挙されたならば、口座開設が困難となる。これは、筆者の経験上でも、多々散見される問題だ。とりわけ、新聞に容疑者として名前が出た過去があると、まず口座開設は厳しくなり、就職も難しくなる。
これは先述した通り、金融機関が「警察と協働して反社データベースの構築と更新」をした結果である。しかし、そうした排除の姿勢が、半グレ少年や青年たちの更生を難しくしている。その結果、彼らは再び犯罪社会に舞い戻り、再犯せざるを得なくなる。彼らは負の回転ドアを回し続けることしかできない。
親兄弟、社会や国からも見捨てられる「絶望」
しかし、そもそも、金融機関が反社会的勢力の口座開設などを謝絶するその目的は、マネーロンダリングなどにより、企業が反社会的勢力から被害を受けることを防止するためだったはずだ。
ところが、現在の「排除のシステム」では反社の枠を拡げて、犯罪に利用された末端の特殊詐欺犯などを排除することしかできない。それでは安心・安全な日本社会を構築するのは夢のまた夢の話で、「新たな被害者を生み続ける」弊害しかないのではないか。
非行・犯罪を繰り返す人の多くは、不遇な家庭に育ち、親兄弟に見捨てられた人が多い。親兄弟に見捨てられ、社会や国からも見捨てられる絶望は、当事者にしかわからない。そうした人たちをワンストライクでアウトとしてよいものかどうか?
人間は過ちを犯す動物である。不寛容な社会のメリットやデメリットを、アフター・コロナを見据えて考える必要があるだろう。
私には「銀行口座持てないんすよ。口座振り込みが厳しいんで、手渡しの会社しか無理と思います」と言った時の、少年の諦めきったような表情がどうしても忘れられない。