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視聴率は7.9%から24.7%へ…広がる「トリック」の波紋

『トリック』の平均視聴率は第1シーズンでは7.9%だった。堤幸彦は「さもありなん」という感じで「まあ悪くはないな」程度の受け止め方であったが、逆にテレビ朝日のプロデューサー桑田潔はその数字に愕然とし、この面白さを視聴者にちゃんと伝えることができなかったのは自身の責任だったと反省するなど、当時は受け止め方も様々だった。

 しかし放送終了後の冬、『トリック』のDVDが発売されるとテレビドラマのソフトとしては異例の売上を叩き出す。そして2002年1月11日には第2シーズンの『トリック2』が同じ金曜ナイトドラマ枠でスタート。

 平均視聴率も同じ深夜枠ながら前シーズンを上回る10.6%と二桁を記録。同枠では当時の最高視聴率だった。同年11月には映画『トリック劇場版』が公開され、全国放送ではなかったドラマにもかかわらず興行収入約13億円のスマッシュヒットとなった。

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 翌2003年には第3シーズンの『トリック ~Troisième partie~』が、遂に深夜枠から夜9時の木曜ドラマ枠に進出。初回放送で17.8%の視聴率を記録し、全10話の平均視聴率も15.6%であった。2005年の名取裕子をゲストに迎えた『トリック 新作スペシャル』ではなんと24.7%視聴率を記録。これはシリーズ史上最高視聴率である。

 その後2014年までに3本のスペシャルドラマ、4本の劇場版が作られるなど、『トリック』シリーズは14年続き、ファンに愛され続けた。

なぜ、『トリック』はここまで愛されたのか

 インターネットが普及しはじめた当時、ドラマと連動したホームページはファンとドラマを繋ぐ重要なツールであった。ドラマ制作陣の日記や新エピソードの裏話など、放送時以外でも『トリック』ワールドに浸れたことが、これだけ長く愛された要因でもあるだろう。

『トリック』出演によって仲間由紀恵は、主演ドラマ『ごくせん』でも「笑いに関してはお任せします」とスタッフに言われるほどコメディエンヌとして開眼して人気に。その後も大河ドラマ『功名が辻』、映画『大奥』などに主演しブレイクする。

2006年、『大奥』制作発表会見での仲間由紀恵 ©文藝春秋

 また阿部寛も役の幅を増したことで“怪優”と呼ばれ、硬軟自在の俳優として再ブレイクを果たした。それからのふたりの活躍は説明するまでもなくご存知の通りだ。

 この記事の準備として『トリック』の全作品を改めて見直してみたが、初回エピソードでのキャラクターから僅かな変化はシリーズに見られるものの、14年間の時間の流れを感じないほど各作品が同じであることに驚く。

 これは批判ではなく、かなり意図的に軸がぶれないように細部にまで気をつかっているということだ。あの第1回放送時に見たときの、自分だけの「見つけたオモチャ」がいつまでも変わらないことの安心感が、『トリック』の大きな魅力であることに改めて気付かされた。


※「わたしの名前は山田奈緒子。今を時めく超実力派のマジシャンだ」のセリフは第1話には登場しない。その後、エピソードや小ネタを入れながら変化はするが、エピソード毎、映画版、スペシャル版ではかならずチャイナドレス姿の山田奈緒子がこのモノローグとともに登場するのが定番となっている。

【参考資料】
『TRICK完全マニュアル』光進社
『キネマ旬報 2002年11月下旬号』キネマ旬報社
『キネマ旬報 2006年6月下旬号』キネマ旬報社
『さよなら!トリック公式パーフェクトBOOK』KADOKAWA
『別冊ザテレビジョン 連ドラ10年史』角川書店
『日本科学技術大学教授上田次郎のどんと来い、超常現象』学習研究社
『日本科学技術大学教授上田次郎のなぜベストを尽くさないのか』学習研究社
『超天才マジシャン山田奈緒子の全部まるっとお見通しだ!』ワニブックス
『トリック大感謝祭オフィシャルBOOK』宝島社
『堤っ』角川書店
『帰天城の謎』講談社
仲間由紀恵 むちゃくちゃだった「TRICK」の現場「死ぬんじゃないかな?と思うこといっぱい」(スポニチ・2021年6月24日)