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劇的な回復の背景には、リハビリを含めた慢性期や回復期の医療の知識を持つ糸田と、急性期医療の現場で働いてきた原田の「知識」を、高いレベルで融合できたことがある。
「日頃から、医療は“医師と患者”の関係ではなく“人と人”の関係が築けて初めて成り立つものだと思っています。診察室で初めて会う患者さんとは、この“人と人の関係”が築けるまでに一定の時間を要するのですが、雷太郎とはそれを省ける。しかも、お互いに医療者であり、何でも言い合える仲だったことが、ここでのリハビリの成果を大きくアシストしてくれたのは間違いない。あいつがどう考えているかわからないけれど、少なくとも私のほうはラクでしたよ」
原田も同じ思いだ。
「一人ひとりのスタッフのリハビリに対するスキルの高さは見事なものでした。それだけでなく、すべてのスタッフが“障害者を特別扱いしない”という点でも居心地の良さを感じていました。これは私が働いていた急性期医療の現場との決定的な違いです。急性期病院に障害者がいることは、口には出さなくても“特別なこと”であり“異質なこと”なのですが、わかくさではそんな雰囲気が微塵もない。居場所を与えられた感動というか、『ああ、俺はここにいていいんだ』という喜びを感じさせてくれる場所でした」