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「ヤラセ捜査のために約40億円の覚醒剤130キロを道内に」北海道警が“重い十字架を背負った”大スキャンダルの裏側《日本で一番悪い元刑事インタビュー》

「ヤラセ捜査のために約40億円の覚醒剤130キロを道内に」北海道警が“重い十字架を背負った”大スキャンダルの裏側《日本で一番悪い元刑事インタビュー》

映画になった稲葉圭昭氏インタビュー#2

note

上司からの“ヤラセ捜査”を容認する衝撃発言

「初めて首無しを押収したのは北見署にいた頃。この年は、北見方面だけ拳銃を摘発できていないため上司から『なんとかならんか』と言われて、札幌のヤクザに相談したんですよ。

 用意してもらった拳銃を北見から4時間かけて取りに行って、同行した若い捜査員に『これをロッカーにいれてこい』と指示して、自分は身分を偽って役所(警察)に通報した。この電話は『元暴力団風の男から情報提供』という形で記録が残っているはずだよ。それで“駆け付けた警察官”である俺がロッカーから拳銃を見つけて終了。

 めでたく北見署と俺はこの件で表彰されてね。この時は首無しは恥ずかしいことだから、カッコ悪いことしたかなと後悔したけど、ノルマ達成や評価される嬉しさが勝ったね」

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「地元のヤクザをシャブで逮捕した後の取り調べに入る前の写真。たまたま通りかかった鑑識課員に危険写真を撮ってもらいました」(稲葉氏)

 それは稲葉氏の上司も同様だったようだ。思うように正規の方法で拳銃の押収ができない中、室長は「首無しでもよい」と発言したという。それはつまり“ヤラセ捜査”を容認する発言だった。

映画の象徴的なシーンとなった大不祥事

「タガが外れました。俺はもちろん、銃器対策室が上げる拳銃は首無しばかり。ほとんどヤクザからもらったり買ったりしたものでした。常に罪悪感はありましたが、『道具がなければ事件が起きない』と自分に言い聞かせていたし、上司からもよく褒められた。あの頃はみんなおかしかったんだよ。拳銃押収の強化月間に備えて、常に銃をストックしておく、なんてこともしていました」

「毎年、機動隊内で行われていた『隊祭』という、機動隊のお祭りみたいなものに参加したときの写真です。ジンギスカンを隊員みんなで食べる、今で言うところのBBQパーティーみたいなものでしょうか」(稲葉氏)

 課されるノルマを協力者から提供される拳銃で凌ぐ日々。そんななか、稲葉氏たちは前代未聞の大不祥事を起こしたという。それは映画『日本で一番悪い奴ら』でも、作品の象徴的なシーンとして描かれている。

「1999年から2000年にかけてのこと、あるエスが仲介してくれた、東京のヤクザの元親分から持ち込まれた話がきっかけでした。このエスは過去にも暴力団員に扮した俺と一緒に、関東の別のヤクザから拳銃を購入したこともあった。信頼していた相手で、映画では中村獅童さんが演じていましたね。

 そのエスが『拳銃を200丁密輸させ、船員の中国人を逮捕させる代わりに覚醒剤を国内に入れるのを見過ごしてくれ』と持ち掛けてきたんです。どうせダメだろうと思いましたが、函館税関と相談した上司からOKが出てしまった」

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