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「『違法捜査はよくてなんでシャブはダメなんだ』って本気で思ってた」覚醒剤密売の“シノギ”で1億円以上の利益を上げた《極悪刑事の素顔》とは

「『違法捜査はよくてなんでシャブはダメなんだ』って本気で思ってた」覚醒剤密売の“シノギ”で1億円以上の利益を上げた《極悪刑事の素顔》とは

映画になった稲葉圭昭氏インタビュー#3

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刑務所や拘置所で「刑事もこんな人ばかりならいいのに」

「刑務所ではいろいろと考える時間が出来て良かったと思っています。景色を見ながら季節の移ろいを初めて感じました。寝る前に壁のカレンダーを見ながら『あと何年だろう』と思ったり、翌日の作業のことを考えたりしているうちに、すぐに眠りに落ちる。刑務所や拘置所のみんなから良くしてもらって『刑事もこんな人ばかりならいいのに』と思っていたな。

 作業は高齢受刑者の介護などでした。ご飯の支度をしたり、おむつを替えたり。同じ作業をしていたのは、あさま山荘事件の犯人と人殺しでしたよ」

 稲葉氏は2011年9月に刑期を終え、翌月に『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』を出版。映画化もされ、周囲は騒がしくなっただろうが、稲葉氏はいまも穏やかな生活を送っている。

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「生活のメインは八百屋と惣菜屋です。毎朝早起きして、卵焼きを作ったり、市場に買付けにいったり。本当は、俺にはこういう穏やかな生活のほうが合ってたんじゃないかと思います。

 依存症のアドバイザーの資格もとったので、シャブに限らず、酒やギャンブル、ゲームなどの依存症の人の力になったり、相談する場所を紹介したりすることもありますよ。俺は最近はもう覚醒剤からは抜け出せたけど、シャバに出てきた当初とかはふとしたときに打ちたくなる時があった。ボーッとしていると、すっと考えがシャブに持っていかれてしまいそうになるんだよ。本当に覚醒剤は怖いものなんですよ」

「道警の闇はまだどこかでくすぶっている」

 刑事としての経験を生かした仕事もあるようだ。

稲葉氏 写真/菊地健太

「探偵業。次男と2人で始めました。浮気調査、素行調査、不良社員、いろいろとやっていますが警察という後ろ盾がないので仕事は難しいですね。雪の中、外で張り込むのはもうしんどい。自分は広告塔で実務は次男が頑張っています」

 しかし、華々しく活躍した刑事としての生活に未練はない。稲葉氏は取材を受けた理由についてこう語るのだ。

「やっぱり俺の経験は、語り継いでいかないといけないと思うんです。今の日本にも、刑事に憧れた俺みたいな若い学生だっているでしょう。エスとの付き合いや捜査っていうのは本当に難しい。正直、道警が抱えていた闇はまだどこかでくすぶっているんじゃないかとも思う。俺にできることはただ語り継ぐことです。もう警察には戻りたくないけどね」

 愛猫「ベイビー」を撫でながら、稲葉氏はそう言って少し笑みを浮かべた。

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