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映画はヒットしたが、多額の借金が…

 映画自体はヒットし約5億円の配給収入があった。だが、それ以上に製作費がかさみ、さだは莫大な借金を抱えることになる。その総額は金利も入れると35億円におよんだという。借金を返済し、スタッフに給与を支払うためにも懸命に働くしかなかった。そのために以前から年間100回程度行っていたコンサートが、一時は160回ほどにも増えた(※2)。

 のちに当時を振り返り、ノイローゼになる暇もなく、《返すにはどうしたらいいんだろうと思うと、自転車操業で働くしかない。でも、お客さんがたくさんコンサートに来てくれた。お客さんが借金を返してくれたんです》と語っている(※3)。もちろん、客を呼ぶために、さだのほうからもトークで爆笑をとるなどサービスを惜しまなかった。もともと彼のコンサートは歌よりもトークが長いと評判だった。

映画「長江」(1980年)

 返済に追われる一方で、1987年には広島に原爆が落とされた8月6日に同じく被爆地である長崎から平和を祈る野外コンサート「夏・長崎から」をスタートさせている。広島とくらべて長崎はアピールが弱いとの思いから始めたもので、入場料は無料のため毎回少なからぬ赤字を出しながらも、2006年まで20年続いた。

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「素人でいつづけることが大切」

 郷里ではまた、1995年に「ナガサキピーススフィア・貝の火運動」がさだの呼びかけで発足し、全国各地のボランティアと連携しながら平和の大切さを訴える活動を行っている。2003年には同運動のなかで寄せられた寄付をもとに「ナガサキピースミュージアム」も建設された。こうした一連の活動についてさだは次のように語っている。

©文藝春秋

《戦争や平和、あるいは環境の問題にしても、素人でいつづけることが大切じゃないかな。歌手である僕の役割は、それぞれの問題の入り口を示すことだと思っています。〈玄関思想〉と勝手に言っているんですが、僕の歌を聴いて、何かを感じてくれればいいんです》(※4)

 今月6日に開催された在京ラジオ局・文化放送の開局70年の記念コンサートでは、6月にリリース予定のアルバムから新曲「キーウから遠く離れて」を歌っている。タイトルからもわかるとおり、現在戦火が広がるウクライナの首都キーウ(キエフ)への思いを込めたもので、当初予定していた「北の国から」を急遽変更しての披露であった。