あっという間に100万円が消えていく生活
――NFLのチアになるという5年越しの夢を39歳のときに叶えたわけですが、アメリカに来てからのお仕事というか、経済面はどのようにやりくりを?
山口 まずは学生ビザで入国したんですけど、その期間は働けないので完全に貯金の取り崩しです。泣きそうになるくらい、それこそ1万円がなくなるかのように100万円が消えていきました。そもそもO-1ビザを取るのにも100万かかっていますしね。
――弁護士費用ですか?
山口 それもですし、細かい話だと、アメリカ移民局や大使館に払う費用、ホテルやAirbnbの宿泊費、オーディション用の衣装代や化粧品代、面接やイベント用のワンピースやドレス代など、信じられないスピードでお金が消えていって。社会人時代の貯金が見事に吹っ飛びました。
今はNFLやNBAのチアを目指す人たち向けのコーチングやシンシナティ在住の子どもたちにチアを教えているのでその報酬と、ベンガルズからのギャランティで暮らしている感じです。
チアを続けるために、本業を持つことは当たり前
――チアとは別に本職を持つことが多いのでしょうか。
山口 ほとんどの人がチアの他に本業を持っています。シンシナティには「シンシナティ・チルドレンズ」という有名な小児病院があるんですけど、チアのメンバーの子も何人か勤務しています。夜勤明けでゲームに来たりしていますね。
あとはP&GやGEアビエーションの本社もあるので、そういう大企業で働いている子もいますし、博士号を持っている人も。
入団にあたって、学生であれば学歴や、社会人であれば職業の内容も重視されます。NFLチアには、チアリーダーはよき「ロールモデル」でなければならない、という考え方があるんです。
――チアは名誉職みたいなものなんですね。
山口 自分が本当に好きなことをプロとしてやる、誇らしい経歴の一つだと思いますね。
――1週間のスケジュールはどんな感じですか。
山口 週に2回、火曜と木曜の夜7時から練習があります。練習のある日は夕方4時半くらいからメイクやヘアの準備をはじめて、集合1時間前にはスタジアムに着くようにしています。
――練習でもお化粧するんですね。
山口 「フルメイク・フルヘア」といって、練習でも身だしなみはすべて試合仕様です。
1時間前に会場入りするのは、1秒でも練習に遅れると罰として試合に出られなくなるので、怖くて自主的にそうしています(笑)。