スパイスカレーに目覚めた漫画家・西倉新久さんによる「カレー」と「音楽」についての漫画『ピリピリとビリビリ』(文藝春秋)が2022年4月12日に発売された。

『ピリピリとビリビリ』の記事を再掲する(2021年12月10日初出)。

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 なんだか疲れた時、グイと背中を押してくれるのはスパイスの心地いい刺激でした。ここ一番の頑張りが欲しい時、友達になってくれるのは大好きな音楽のリズムでした。だから、

「日本中で、いいえ世界中で愛されるものを2つ挙げよ」

 もしそう聞かれたなら、わたしは躊躇無くこう答えます。

「スパイス(カレー)」と「音楽」。

こんな大事なことをどうして忘れていられたのか

写真/西倉新久

 定期的に食べたくなるお気に入りのお店のスパイスカレー、落ち込んでいる気分をふっとばしてくれたライブハウスの音楽。どちらもわたしの生活に無くてはならないものでした。

 しかし幼い子を2人抱えて生活する現在、ピリピリと辛いスパイスの効いたカレーも、ビリビリと体に伝わる振動がたまらないライブハウスも、気が付いたらわたしから遠い存在に。

 そんなとき、ふと読んだのが文春オンラインで連載中のマンガ『ピリピリとビリビリ』。読み進めて思い出したんです! こんな大事なことをどうして忘れていられたのかって!

 配膳されたスパイスカレーを目前にしたときの興奮、鼻先をくすぐるスパイスの香り、刺激と辛さで汗を吹き出しながらも止められないスプーン! アリーナでジャンプするあの瞬間のアドレナリンドバドバの高揚感にも似た時間が一気に脳内を巡り、わたしは居ても立っても居られなくなったのでした。