高校卒業後は美術の専門学校へ入学
病気の影響もあってか、入学して2カ月後には父と大喧嘩をして家出をした。行く当てもなければお金もない。仕方なく電話ボックスにチラシが貼ってある風俗店に電話をし、「仕事をさせてほしい」と伝えた。
「オーナーからは『未成年に仕事をさせたくない』と言われました。でも、『家を出てしまいお金が必要なので、何とか働かせてほしい』と懇願して、その日のうちに5人の客をとった。そこで『こうすればいざというときにお金を稼げるんだな』と思いました」
高校卒業後には美術の専門学校に入学するために上京した。両親は「漫画家になるなんてバカ言ってないで、早く稼ぎの良い旦那を捕まえなさい」とこぼしつつ、諦め半分で学費を支払ってくれたという。
上京するとすぐ、25社もの出版社に漫画を持ち込んだ。するとそこで女性向けの成人漫画、いわゆるレディコミ誌で漫画家デビューも果たすことができた。
最初の夫と出会ったのもこの専門学校時代だ。遊びに行った友人宅で知り合ったのが最初の出会いだったという。
夫の会社が倒産、生活費を稼ぐために再び性産業へ
アートコーディネーターだった彼は、卯月さんの漫画作品を厳しく批評した。それを聞いて収まりがつかなかった卯月さんは、議論をするために翌日、直接彼の家へ乗り込んだのだ。
「そうしたら、白熱しすぎて夜中を過ぎてしまって。そのまま彼の家に住み着いてしまったんです。後で知ったのですが、彼はIQが140以上あり、フランス文学や現代美術、現代音楽などにも造詣が深く、議論しても負けることのない人でした」
その後は彼の子どもを妊娠。7カ月を目前にしたころ、「僕の死を看取ってください」とプロポーズされ、20歳で結婚した。
「主人は私の教師であり、とても尊敬していました。ただ、その主人は『3年後に自殺するつもり』と公言しており、結婚後は『生きているうちに彼のしたいことを100%かなえること』が私の目標でした」
一方で、平穏な生活は長くは続かなかった。結婚から時を待たずして夫が経営していた会社が倒産。日々の生活費をすぐに稼げて、子どもの託児所代を払ってもお釣りがくる、それでいて主婦でもできる仕事とは――。選択肢は少なく、自身の高校時代の記憶もあり、卯月さんは再び性産業へ入ることになる。選んだ道はAV女優 だった。
ただ、そのときの経験は、漫画を描くうえでの大きな財産になったと卯月さんは振り返る。