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 では、なぜロシアは今、苦戦を強いられているのか。膠着状態が続いた場合、プーチンはどんな手を使ってくると考えられるか――ロシアの軍事戦略の歴史も踏まえつつ、詳しく分析したいと思います。

“お粗末”な軍事作戦

 今回のウクライナ戦争は、中途半端で不可解な点が多く目につきます。まず、開戦の動機がはっきりとしない。これまでのロシアの戦争や武力介入を見ると、それぞれに一応もっともらしい動機はありました。

 例えば2008年のグルジア戦争。この戦争の発端は、グルジア軍による南オセチア自治州への侵攻でしたから、ロシアには“防衛”のためという名目がありました。2014年のウクライナ介入も、親ロ派政権の崩壊をクーデターによるものと位置付け、治安維持の目的で軍事介入をおこなった。どちらもロシアの平和を脅かす事態だと、国内で一定のコンセンサスが形成されています。

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 ですが今回の全面侵攻について、プーチンは、ウクライナ東部の親ロ的な2地域を挙げ、「この地域を保護するため、ウクライナの軍事力を完全に破壊する必要があった」と、よく分からない理屈をこねている。なぜ今なのかも見えないのです。

ロシア軍の攻撃を受けるウクライナ・リビウ

 もう一つ指摘すべきは、軍事作戦のお粗末さです。

 この戦争におけるロシアの作戦は、軍事用語で言えば、外側から攻めていく「外線作戦」。ウクライナは内側から守る「内線作戦」となります。

 外線作戦の最大の利点は、どこから攻めていくかを選ぶことができ、緒戦の主導権を握れることです。ウクライナの視点に立てば、どの方面から攻め込まれるか分からないため、限られた戦力を各地に分散せざるを得ない。相手側の戦力が一番手薄なところを狙い、兵力を再編させたうえで一気に突っこんでいくのが戦争の王道です。

 湾岸戦争でのアメリカ軍が、まさにその手法をとっていました。アメリカはペルシャ湾に強襲揚陸艦を展開させたため、イラク軍は上陸に備えてかなりの兵力を配備せざるを得なくなった。ところがアメリカはサウジアラビア側から機甲部隊を突入させたのです。“アッパーカット”が見事に決まった形で、イラク軍は壊滅状態となりました。