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盗難件数トップの県は……

「盗難件数はここ数年茨城がずっとトップでした。やはり海が近くて輸出しやすく、『ヤード』と呼ばれる窃盗団の基地が多いのが要因だと考えられます。そうした地域ではランクルやスポーツカーのような車のほか、ヴェゼルやCH-Rといった車種も被害に遭っています」

 都道府県別の盗難認知件数を見ると、2016年から2020年までは5年連続で茨城県がトップ。2021年には千葉県が1位 になっており、愛知県や大阪府も上位の常連となっている。

 なお、日本損害保険協会の資料によれば、2021年中の自動車盗難被害に対して支払われた保険金額の平均は236.9万円。保険金額は新車価格よりも下がることが多いとはいえ、必ずしも高級車ばかりが盗まれていないことを示している。

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 狙われやすい車種はもちろんあるが、「ウチは普通の車だから大丈夫」というわけにもいかないのである。

盗難完了までの時間はわずか「2分」

 時代が進むにつれ、車に搭載されるセキュリティの技術は向上しているが、それに合わせて盗難の手口も巧妙化し、盗むまでの時間も大幅に短縮されているという。

「もうずっと純正セキュリティと盗難の手口はイタチごっこを繰り返しています。4、5年前はリレーアタックっていうのが主流だったんですけど、今はCANインベーダーというのが主流になってきていますね」

 リレーアタックとは、「スマートキー」の登場から間もなく生まれた手口であり、キーから発される微弱な電波を中継器により増幅し、ある程度離れた場所でもロックを解除してしまう。ちなみにこの手口に対しては、キーをスチール缶やアルミホイルに包むなどして電波を遮断することで対策が可能だ。

 最近の主流とされるCANインベーダーは、簡単にいえば「車両の制御システムへのハッキング」だ。フロントバンパーなどにわずかな隙間をつくり、電子回路に専用の装置をつないでロック制御を乗っ取ってしまう。

「CANインベーダーは鍵がどこにあろうと関係なく、フロントバンパーの片側だけ軽く外せば装置をつなげるので、2分かからず盗めてしまいます。

 5年くらい前はノートパソコンをつないで作業する姿が監視カメラに残されていましたが、今はモバイルバッテリーのような形状のツールにプログラムが組み込まれていて、配線をつないだ途端にロックが解除されるようになっています」