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 そんな自分なので、広く浅くいろんな世界を見ておくために、中学の時から毎年10個、新しいことにチャレンジすることにしていました。

 その流れでバックギャモンも、「そういえばゲームってやったことなかったな」と思ってはじめたのがきっかけです。

――矢澤さんはデビュー戦でプロバックギャモンプレイヤーに勝利し、早々に才能を認められたそうですね。ご自身のどんな“筋”が良かったのだと思いますか。

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矢澤 サイコロを使うゲームなので、とくに初心者の場合は運のゲームと捉えて出目を楽しむ人が多いんです。

 私の場合、もっと数学的に奥が深いゲームなのではないかと思っていました。はじめてすぐに4万円の解析ソフトを購入し、定石などを研究していました。コンピュータの出す手を“問題の解答”とするなら、なんでその手が正解なのか、証明を考えて行ったんですね。AIがなければここまで早く力をつけることはできなかったと思います。

マスクも「バックギャモン柄」 ©文藝春秋 撮影/山元茂樹

――AIの力に加えて、探究心や集中力が並外れていらっしゃるような。

矢澤 ハマるとすぐ、「海賊王に俺はなる!」みたいになっちゃうんです。バックギャモンの前はスキューバダイビングに燃えていて、世界7つの海を制覇しました(笑)。

 バックギャモンは、サイコロの確率計算や相手のコマと自分のコマ、どちらがよりゴールに近いのかを判断するために暗算が必要です。もともと理数系ではないので、今でも計算するのは面倒ですね。本来なら二桁の足し算すらしたくないけど、試合の時は4桁の割り算も勝つために必要なのでやっています。

©文藝春秋 撮影/山元茂樹

世界選手権の決勝戦は8時間…「だいたい大会後は2キロ痩せます」

――ものすごくカロリーを消費しそうですね。

矢澤 2014年の世界選手権の決勝戦は8時間もかかりました。だいたい大会後は2キロ痩せます。

 カロリー補給という意味でも、対戦中は常にコーラを飲んでいます。チョコや飴、フリスクもたくさん持っていって、いつでも直ぐ口の中に入れられるように。その辺りは将棋に似ているのではないでしょうか。

ドクドクと血が流れているのを感じながらの試合…「手術しなければ1年持たない」

――そもそも矢澤さんは、病気が原因で兼業生活からプロになったとお聞きしました。

矢澤 バックギャモンには囲碁や将棋のように収入を得られるプロリーグが日本国内にないので、はじめから趣味の範囲で続けようと思っていたんです。