術後は急激なホルモン分泌の変化によって、ホットフラッシュが強く出るようになりました。感覚としては、お風呂でのぼせて気持ち悪くなる感じです。試合中も突然症状が出てきて、集中力に大きな影響を及ぼします。元に戻るのに15分ほどかかるので、試合時間を15分巻きで進行し、症状が出てきた時に備えて時間を残しておくようにしています。
――著書『がんとバックギャモン』の中で摘出した腫瘍を掲載されていました。矢澤さんがお医者さんに撮影を頼んだんですか?
矢澤 そうです。手術は開腹手術で、内臓を一度外に出すような話を聞いたので、「手術の記録として私のお腹から腸が外に出ている写真を撮って頂けませんか?」とお願いしたんです。内臓が自分の身体の外に出る機会なんてそうないと思ったので、これは“新しいこと”じゃないか……! と。
――たしかにそんな機会は「そうない」にこしたことはありません。
矢澤 でも先生から、「手術中はそれどころじゃない」と断られました(笑)。だから「せめて摘出したものだけでも写真に残したい」ということで、術後に撮影させてもらいました。摘出したリンパもまだスマホに残ってますよ。
――どんな時に摘出した腫瘍の写真を見返しますか。
矢澤 iPhoneで写真を見ているとスマホのおすすめ機能で、「○年前のあなた」みたいな感じで、自動的に出てくるんです。この前は、AIが摘出した臓器を焼き肉のホルモンかなにかと判定したみたいで、「新宿区の秋の味覚」としておすすめされました。
「女がタイトルを取ると格が落ちる」
――矢澤さんはどこかひょうひょうとされていると言いますか、冷静に見えます。病気以外で、プロバックギャモンプレイヤーとして大変だったことはどんなことがありますか。
矢澤 基本的に大会は海外ですから、時差に体を合わせるのが大変ですね。すぐにパチッと切り替えられるタイプではないですし、最低でも1週間くらい前から大会先の国の時間に合わせて生活しています。
また、男性プレイヤーとの扱いの差でも苦しめられることもありますね。国内大会で勝った時は「女がタイトルを取ると格が落ちる」と言われたこともありましたし……。
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