「俺の愛人になれ」「おじさんに興味ないです」
――矢澤さんは海外でストリートギャモン、武者修行もされているんですよね。国外では「教えてあげるおじさん」はいないですか。
矢澤 世界のどこにでもいます。「俺の愛人になれ」などと不条理なことを言われると、「おじさんに興味ないです」と、ストレートにお断りしていました。ただそれでプライドを傷つけられて恨む人もいるので、たとえセクハラであっても上手くかわす立ち回りができないといけないんだと、バックギャモンを通してはじめて学びました。
――被害者側が気を遣わないと、ゲームの場に居づらくなる。なんとも理不尽です。
矢澤 ハラスメント以外でも、治安の悪い国や地域でのストリートギャモンは特に警戒しますね。屋内でも常にトイレや窓、出口を確認し、出された飲み物や食べ物にも気をつけています。賞金がかかった大会では下剤など薬を入れられることもありますから。
気をつけるのは自分が女だからということもありますが、小さいときに小学校の先生から「知らない場所に行ったら非常口を確認すること」と言われたのがいまだに残っているのかもしれません。真面目な子どもだったので(笑)。
「毎年10個の新しいチャレンジ」を繰り返す中で切り拓かれたこと
――5年生存率50%のがんや女性差別といった困難に直面しながら、2度の世界チャンピオンを達成し、「ゲームチェンジ」ができた感覚はありますか。
矢澤 小さい時は「チョコレート以外のアイスは食べたくない」と思っていました。でも今はチョコミントの方が好きです。もしあの時チョコレートだけで完結していたら、私はチョコミントの美味しさを知らずに生きていたんだ、と思います。
がんの術後は自己導尿、脱毛、吐き気といった辛い体験をたくさんしました。でもそれも、「毎年10個の新しいチャレンジ」としてカウントすることで、乗り越えていけたんです。
バックギャモンの世界にはまだまだ女性が少ないですが、「0」と「1」では全然違う。今後も自分が世界で活躍することで、女性プレイヤーが当たり前の景色になっていけばいいなと思いますね。
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