胆管と胆嚢にできるがんを両方含めて「胆道がん」と呼ぶ。2015年死去した女優の川島なお美さん(享年54)は胆管がんだった。この病気がやっかいなのは、発症の原因がほとんど解明されていない点にある。

 横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学の遠藤格(いたる)教授が解説する。

「胆管は長さ15センチ、太さ7ミリくらいのごく小さな臓器で、肝臓で作られた胆汁を十二指腸まで流すのが役割です。胆汁をためておくところを胆嚢と呼びます。がんになる原因は解明されていませんが、何らかの要因プラス長年持続する炎症みたいなことだと考えられています。たとえば胆嚢にできる胆石が長年あると炎症が起き、胆石患者の1%が胆嚢がんになります。実際に胆石を手術で取ってみると、確率として100人に1人くらいは胆嚢がんが見つかるので、ハイリスクの疑いが持たれています」

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 胆石になりやすい条件は、女性、40歳くらいの中年、肥満の3つ。予防できるとしたら、太らないことくらいか。

「胆管がんも同様で、肝臓内部の胆管に石ができると胆管がんがよく見つかると言われています。石によって胆管が炎症を起こしたり、胆汁が詰まったりして発がんするのではないでしょうか。先天性の膵・胆管合流異常症や原発性硬化性胆管炎の方は胆道がんになりやすいのですが、この症状をお持ちの方はごく少数です。それ以外の要因はまだ解明されていません」

 早期で見つかるのは、まれだという。

「高血圧や糖尿病の患者さんがたまたまCTを撮ったり、別の原因による腹痛で超音波検査を行ったり、偶然でないとなかなか早期では見つかりません。がんが進行すると、尿が茶色くなる褐色尿、便が灰色になる白色便、黄疸、腹痛、発熱も出ます。見つかるきっかけは腹痛が多いですが、症状が出ていれば進行がんのことが多いです」
 
 年間死亡数は約1万9000人、部位別で6位。決して少ない数字ではない。早く見つけるポイントは何か。

「肝機能の数値『ALP』(アルカリフォスファターゼ)に注意するといいかもしれません。一般の血液検査でも計ることが多く、これは胆汁の流れが悪いと敏感に上がります。患者さんのなかにも半年前に受けた検査でALPが高かったけどそのままにして、その後の腹痛や黄疸で私のところに来られた方がいらっしゃいます。330までが標準ですが、1.5倍くらいに上がれば要注意です。それから定期的な腹部の超音波検査。手軽にできて痛くもなく、被曝もしません。超音波検査で胆嚢のポリープが見つかることもありますし、胆管にがんができて流れが悪くなれば太くなる。がんそのものは見えなくても、胆管が太くなることでわかるときがあります」

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 早期で見つけたら、次に待つのは手術するかどうかの決断である。

「胆道がん全体の5年生存率は40%ですが、早期の胆嚢がんはほぼ100%、早期の胆管がんなら80%くらいは助かります。しかし進行して血管にからみついたりすれば生存率は10%まで下がります。早期で見つかれば治る確率は上がるのですが、早期だとそれだけ病巣が小さいため、がんの確定診断が難しい。決断できないまま、進行がんになってしまう恐れがあり、そういうジレンマはあります。手術になれば肝臓を半分取ったりする大きな手術になり、全国平均の死亡率は5~10%。命を落とすかもしれない手術になるため、外科医もおいそれとは言いにくい。どちらのリスクをとるのか、信頼のできる医師とよく話し合って決めてください」

 治療法は、外科手術による切除、抗がん剤治療、放射線治療の3つだ。

「切除ができれば約4割は助かります。切除できない進行がんには抗がん剤治療となり、最近は進歩していて切除可能になることもあります。切除できなければ一時的には小さくなりますが、5年後の生存率は1%です。他の病気などで手術できない方には放射線治療という選択肢になります」