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「そんとき憶えてたから、後に猿岩石で出てきた時、うわーっ、そうなんかーって」と倉本さん。

 もう一方の当事者、土屋さんも昔を思い出すように遠い目をしながら語り出した。

「そう。で、結局、巨人師匠の弟子をクビになるんだけど、とりあえず上京して、あてもなく東京ドームの下かなんかで野宿したっていうのをオーディションで聞いて、『あ、コイツ野宿したことあるんだ』って……」

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 土屋さんは、その野宿経験だけで猿岩石をヒッチハイクに行かせたという。

 とはいえ、何か今に繫がる根性悪の愉快犯の片鱗を感じなかったのか質問すると、

「それは全然感じなかったですよー。とりあえず『EXテレビ』って来るもん拒まずの番組やったから、僕は“トス”を上げただけ」と倉本さん。

「それを『電波少年』で、もう一回トスを上げた」と土屋さんが付け加えた。

猿岩石時代、批評性や並外れた話術は全然なかった

 それでも、ヒッチハイク中のVTR素材で、有吉くんの言葉の端々に、批評性や並外れた話術があったのではないかとダメ押しの確認をしてみたが、「全然なかったね!」と土屋さんは断言した。

 ご両人揃って猿岩石のダイヤの原石性を完全否定、どころか最初から、くすみきった黒岩石だったという。

「お二人ほどのテレビのプロでも、気づかなかったんですか?」

「うん。あの子なんやろねぇ。とんでもなく成長したってこと?」

 こっちが聞きたかったことを、逆に疑問を持たれる始末であった。

水道橋博士 ©文藝春秋

 猿岩石は、『電波少年』の土屋演出によってどんどん極限まで追い込まれていった。ヒッチハイク中に毒を吐いても、編集によって本来の有吉くんとは違うピュアな部分がクローズアップされていく。

「やっぱ、善良でいいヤツになってくわけ。こっちも、そういう風に編集していくし。帰国していろんな番組に出るようになっても、求められてるのは“あの頑張り”だからさ。毒を出すとこはない。しまいには歌が出て、アイドルみたいに売れてくわけだから」

 そう振り返る土屋さんに、「で、あの毒舌キャラになって、こういう風に化けるって感じがわかった瞬間って、すごい面白くないですか?」と聞くと、「いやぁ!びっくりした!」と正直に。

 倉本さんも「だから、さかのぼって巨人さんのとこ弟子入りしたい言うてテレビ局ひとりで来て生放送出たあの根性って、そこの自信あってんなーって。よっぽどの自信とか才能あったんやなって」と続けた。

 テレビの世界で30年以上のキャリアを誇る両雄から見ても、有吉くんの再ブレークの異例さは、ここまで際立っていたのだ。