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「どこまで1局も負けずにすむか」という視点では?

 タイトル戦の無敗についてもう一つの視点でみると、これは文字通りだが、どこまで1局も負けずにすむか、というものがある。藤井は昨年度の王位戦第5局から叡王戦第5局、竜王戦、王将戦を経ているが、この間のタイトル戦では1局も落としていない。番勝負で10連勝中である。

 これまでの記録は、大山が1961年度の十段戦(第3~6局)、王将戦(第1~3局)、62年度の名人戦(第1~4局)、王位戦(第1~4局)、十段戦(第1局)で達成した16連勝が最高だ(※1961年度の王将戦では、大山は3連勝後に「指し込み」による香落ち戦を指しており、この対局でも勝っている。この数字も含めると17連勝となる)。続くのは羽生の13連勝で、中原と渡辺明名人が10連勝を記録している。藤井が4月28日に行われる叡王戦第1局で勝てば、11連勝となり中原・渡辺を抜くことになる。

現在、藤井竜王はタイトル戦で9連勝中(写真提供:日本将棋連盟)

(2)最速タイの名人挑戦、奪取がなるか

 藤井は前期の順位戦B級1組で10勝2敗の好成績を上げ、A級昇級を決めた。勝ち進めさえすればデビュー1年目でも挑戦権を得られる他のタイトル戦とは異なり、名人戦に登場するにはまず順位戦をA級まで昇ってこなくてはいけない。そして、順位戦のクラスはC級2組から1年に1段階しか上がらないので、どれだけ速くとも名人への挑戦権を得るには順位戦初参加から5年かかるのである。

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 過去の最速挑戦記録は6年で、加藤一二三九段、中原誠十六世名人、谷川浩司九段がそれぞれ達成している。加藤と中原はA級までノンストップで駆け上ったが、いずれもA級で挑戦権を得たのは2期目だった(中原は名人奪取)。谷川はA級初参加で挑戦し、名人を奪取しているが、順位戦初参加のC級2組で1期足踏みしている。

 藤井の順位戦はここまで、C級1組で1期の足踏みがあったが、他のクラスはいずれも1期抜けだ。今期のA級で勝ち進み、挑戦権を得れば大先輩3名の記録に並ぶこととなる。

 なお、過去のA級で参加1期目に挑戦権を獲得したのは谷川の他に、山田道美九段、森雞二九段、羽生善治九段(名人奪取)、森下卓九段、森内俊之九段、佐藤天彦九段(名人奪取)、稲葉陽八段、斎藤慎太郎八段がいる。このうち佐藤、稲葉、斎藤が8勝、他の6名は7勝して名人挑戦に名乗りを上げた。藤井が新A級で7勝以上の成績を残す確率は高そうだが、他の棋士も黙って見てはいないはずである。