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「五冠」となった藤井聡太19歳、2022年度に注目される4つの記録とは

「五冠」となった藤井聡太19歳、2022年度に注目される4つの記録とは

2022/04/18
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(3)年度最多勝の更新はなる?

 将棋界において不滅の記録と言われているものの一つに、羽生善治九段が2000年度に達成した年度89局、68勝がある。これは当時、勝てば勝つほど対局がついたオールスター勝ち抜き戦で羽生が16連勝を達成したことが大きい。勝ち抜き戦は現在行われていないので、藤井がこの記録を更新するのは極めて難しいと見られているが、果たしてどうだろうか。

 まず、今年度の藤井が実現可能な勝利数を棋戦ごとに見ていこう。

竜王戦、七番勝負で4勝

名人戦、順位戦A級で9勝

王位戦、七番勝負で4勝

王座戦、挑戦者決定トーナメントで4勝、五番勝負で3勝

棋王戦、挑戦者決定トーナメントで6~7勝、五番勝負で3勝

叡王戦、五番勝負で3勝

王将戦、七番勝負で4勝

棋聖戦、五番勝負で3勝

朝日杯、本戦トーナメントで4勝

銀河戦、本戦トーナメントで1勝、決勝トーナメントで4勝

NHK杯、本戦トーナメントで5勝

日本シリーズ、トーナメントで3勝

 これらをすべて足しても60~61勝で、新記録には至らない。タイトル戦をフルセットで敗れて翌期の対局を指すことになれば、勝ち星の数字はもう少し増える可能性もあるが、あまり意味のない計算だろう。

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 ただ、順位戦A級で5勝4敗が9名で並ぶプレーオフとなれば、順位下位の藤井はそこから8勝を加算できることになるので(順位戦で1年13勝となる)、前述した失冠のケースを合わせ、理論上は68勝を更新する可能性もないとは言えない。もっともこんなことが起きたら、3月中(年度内という意味)にプレーオフをすべて消化できるのかという別の心配も出てくるが……。

一般棋戦4つを同一年度にすべて優勝した棋士はいない

 期待がかかるという意味では、名人以外の七冠獲得と一般棋戦4つをすべて優勝できるかという点も注目だ。なお現行の一般棋戦(新人棋戦を除く)4つを同一年度にすべて優勝した棋士はいない。単一年度の最高成績となると、羽生九段が七冠制覇かつ、NHK杯と早指し選手権の2棋戦を優勝した1995年度か、あるいは五冠保持及び銀河戦、NHK杯、勝ち抜き戦(5連勝から優勝扱い)の3棋戦で優勝した2000年度などが候補に浮かぶが、今年度の藤井はどこまで勝つのだろうか。