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 基本的には、各国の国民に対して現在の生活に満足しているのかを尋ね、その結果を数値化したものと考えて差し支えありません。

 より具体的に説明すると、米国の社会心理学者ハドレー・キャントリルが考案した「キャントリルの梯子(はしご)」と呼ばれる手法が用いられています。

 これは考え得る最良の生活を10、最悪の生活を0とした合計11段階の梯子の中で、自分は今どこにいるのか回答してもらうというものです。自分がどう思うのかを聞く質問なので、自分が幸福だと感じる人が多ければ必然的にランキングは上がります。

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 また、得られた結果に対して、1人あたりのGDP(国内総生産)、社会的支援、健康寿命、人生の自由度、寛容さ、政府や社会に対する信頼度(腐敗の認識)などが、どう影響しているのかについても分析しています。これによって、どの項目が幸福度と相関性が高いのかが分かるという仕組みです。

「日本人が自身を幸福と思っていない」本音の結果

 繰り返しになりますが、この調査のポイントは、本人がどう感じているかです。

 幸福度ランキングの結果はよくメディアでも紹介されますが、特にネット上では、「欧米中心の一方的な調査」「恣意的」「日本の幸福度がそんなに低いわけがない」などといった批判が飛び交っています。しかしながら、こうした指摘が的外れであることは明らかといってよいでしょう。なぜならばこの調査は、各国の国民が自国についてどう感じているのかを数値化したものであり、私たち自身の評価が結果に反映されているからです。

 自己評価のレベルが国民によって異なるのは当然のことですが、自身が幸福であるかを決めるのは自分自身です。またアンケートの回答を誰かに見せて責められるといった可能性はゼロですから、アンケートではそれなりに本音を語っていると考えてよいでしょう。この調査結果を見る限り、日本人が自身を幸福と思っていないのは明らかです。

 では、日本人の幸福度が低いのはなぜでしょうか。幸福度に影響する項目のうち、日本人のランキングが著しく低かったのは「人生の自由度」と「寛容さ」でした。日本の1人あたりGDPが大きいことや、平均寿命が長いことは明白であり、こうした項目での順位は高いですが、自由度や寛容さという点が足を引っ張っているのです。

 この結果は多くの人にとって納得がいくものではないでしょうか。