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 おそらく、日本がよほどの大災害にでも見舞われない限り、2021年以上の逆風がコナンの映画に吹くことはないだろう。緊急事態宣言のど真ん中で70億を超えた『緋色の弾丸』は、何が起きてもコナンシリーズだけは大丈夫、日本の映画産業を支えうるという強靭さを見せつけた作品といえる。

『緋色の弾丸』の内容にも、2021年という時代の痕跡は深く刻まれている。作品の中で開催されるWSG、ワールドスポーツゲームスという祭典は、言うまでもなく東京五輪を思わせるものだ。

 五輪という組織は名前を使うことにさえ非常に権利が厳しいため、あえて架空のイベントという設定にしたと思われるが、知っての通り新型感染症により、東京五輪の延期と『緋色の弾丸』の延期が交差し、最終的には2021年で落ち合うという結果にもなった。

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『緋色の弾丸』(東宝HPより)

『コナン』はなぜ史上有数の成功を収めたのか

『緋色の弾丸』を地元の映画館で見た時、忘れられないシーンがあった。

 劇中で毛利蘭の親友・鈴木園子は、真空超電導リニアに乗るチケットを賞品に、歩美・光彦・元太の小学生3人組、いわゆる少年探偵団にクイズを出す。それは「リニアモーターカーがどのような原理で動いているか」をさりげなく説明しつつ、医師・弁護士・宣教師のなぞなぞのような言い換えをからめた言葉遊びのようなクイズだ。

 凄腕のスナイパー、赤井秀一と彼のファミリー、そして祭典とリニアを標的にするテロリストとのスペクタクルを描く作品の中では、ある意味では浮いたシーンと言えなくもない。

 だが昼間の映画館で、周囲を子供たちに囲まれて見た観客には、そのシーンがどんなに大切なシークエンスであり、『名探偵コナン』の根幹を支える要素であるかを感じることが出来たのではないかと思う。