子どもを持つがん患者の中でよく議論されるのが「子どもへの告知」です。子どもに伝えるのか、伝えないのか。同じがん患者同士でも議論が分かれるこの課題、ステージ4の胆管がんを治療しながら「キャンサーペアレンツ」の代表を務める西口洋平さんはどう思っているのでしょうか。これから先、西口さんが成し遂げたいと考えている目標についても、お聞きしました(前後編インタビュー。#1が公開中です)。

西口洋平さん

どのタイミングで子どもに「がん」だと言ったらいいのか、わからなかった

──子どもに病気のことを伝えるか、伝えないか、という議論をよく聞きます。西口さんはどう考えますか。

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西口 病気のことを子どもに伝えるか、伝えないかというのは大きなテーマです。でもこれには正解があるわけではなく、いい方法もないと思うんです。それぞれの家庭の事情や親子の考え方、地域の特性などいろいろあると思うので、「伝える」「伝えない」という結果ではなく、「考える」というプロセスが大事なんじゃないかと、僕は思っています。

 

──西口さんもお子さんに伝えるかどうか、迷いましたか。お子さんは当時、小学校入学前の年長さんだったんですよね。

西口 娘には妻が伝えてくれたみたいです。「伝えたよ」という報告も受けてないですし、夫婦で娘に伝えるかどうかという議論をしたわけでもないんですが。僕が入院したり手術したりする姿を見て、父親が病気だということは理解していたと思うので、あえてどのタイミングで「がん」だと言ったらいいのか、僕にはわからなかったんですよね。

 でも、ある俳優ががんの手術をしたという話題がテレビのワイドショーで出てきた時、娘が「父ちゃんと一緒の病気だね」とあっけらかんと言ったのを聞いて、「ああ、知ってるんだ」と気が楽になりました。もう変に気を使わなくていいんだ、と。

──ほかの人がどう伝えたか、伝えたらどうなったか、というのを聞くのは、伝えようかどうしようか悩んでいる人には参考になりますね。

西口 「小学校3年生の女の子に伝えたら、こうだった」とか、「小学校5年生の男子の場合、伝えたらこうなった」など自分の例を紹介すると、「うちの子と同い年くらいで参考になった」とか「やっぱり伝えることって大事だね」というように、いろんな意見が出てきます。そんなふうに、「キャンサーペアレンツ」が議論する呼び水みたいな場になればいいと思っています。子どものことを考えて議論するってすごく大事なことなので、僕らはその議論が進むような情報を提供していければいいかな。