わざと見下されることで不用意な発言を引き出し、反転攻勢をしかけるという一連の行動は、クレーム対応でも活用できます。さんざん窓口で怒鳴り散らしている住民に対して同じ方法を取るのです。これは、民間企業でも使えると思いますが、いかがでしょうか。
本交渉前の下交渉で結果を決める
役所は縦割り主義です。このため、「自分が担当する分野なのか、担当外のことなのか」という区別を職員は非常に気にします。自分の担当でミスがあると責任を追及されてしまうので、自分の守備範囲は頑なに守ろうとするからです。しかし、担当以外であれば一気に関心がなくなります。
しかし、想像していただければわかると思うのですが、縦割りにきちんと収まらないことがあります。例えば、空き家問題です。そこに住んでいた単身高齢者が亡くなってしまったような場合を考えましょう。もし、親族が誰もその家の世話をしないと、家が空き家になってしまうことから、いろいろな問題を引き起こしてしまうのです。
具体的には、泥棒や空き巣などの防犯に関すること。また、その空き家が老朽化して倒壊の恐れがあるならば、住宅や環境の問題にもなります。このように一口に空き家問題といっても、役所内の様々な部署が関係してくるのです。しかし、こうした多方面にわたる問題の対応は、公務員にとって苦手分野なのです。そして、「どこの部署で担当するか」は、部署間で駆け引きが行われます。
職員同士の駆け引き
例えば、「低所得者を対象に、市内で使用できる市内共通商品券を配布する」ことが、首長の公約で決まったとします。この場合、だいたい次のような意見が出されます。
職員A(総務課所属)「あくまで低所得者向けの事業なのだから、生活保護課で実施すべき事業だ」
職員B(生活保護課所属)「いやいや、低所得者は生活保護受給者と限らない。商品券の配布事業だから、市内共通商品券を所管する商工課が行えば良い」
職員C(商工課所属)「これは、これまでの事務分担にはない事業だ。だから『どこの課にも属さない事業』を担当する総務課の担当だ」
このように、職員同士で押し付けあいが始まるわけです。こんな時、首長などの上層部の鶴の一声で担当部署が決まれば楽なのですが、首長なども自分が悪者になりたくないので「関係者で話し合って、担当部署を決めてくれ」と問題を丸投げしてしまうことがあります。こんな時に、様々な交渉が始まるわけです。