こうした場合に、3つの課の課長が話し合って、すぐに決めるということはありません。こういう時に活躍するのは、公務員の場合は係長なのです。仕事のできる係長は、こうした時にいろいろな方法で活躍(もしくは暗躍)します。例えば、職員BとCが密かに話し合い、「一緒に、総務課の担当にすべきということで話をまとめてしまおう」と結託して、総務課に押し付けるということもあります。この駆け引きができるかどうかが、係長の資質として重要なのです。
部長に加勢してもらい、反転攻勢に出ようとすることも
また、別のケースとして、仮に、生活保護課か総務課のどちらかにすることまでは決まり、後は両者の話し合いで決まることになったとします。この場合も、係長の出番です。
例えば、まず総務課の係長が、生活保護課の係長に会い、「あくまで低所得者対策であること」、「総務課は、本来このような業務を取り扱わないこと」、「庁内全体の調整を行う総務部長が、生活保護課長は若くて適任であると考えている」などの、いくつかの理屈を持ち出して説得を試みます。それに対して、当然のことながら、生活保護課の係長も反論し、交渉は何回か繰り返されます。
こうして課長同士の本交渉の前に、下交渉を繰り返すことで、双方の主張が明確になります。その様子は、両課長にも随時それぞれの係長から報告されますので、課長たちは「相手に押し付けることができそうだ」や「こちらの分が悪い」などの様子がわかるわけです。そして、場合によっては自分の部長に加勢してもらうなどして、反転攻勢に出ようとすることもあります。
係長の大事な役割
そして、このような下交渉でだいたいの結論は決まってしまいます。課長同士が会う本交渉は、単に内容の確認だけの形式的なもので、単なるセレモニーになってしまうのです。場合によっては「もう決まったんだから、課長同士で会う必要はないよ」となってしまうこともあります。
このように下交渉が、実質的な交渉の場になるわけです。下交渉の意味は、いきなり本交渉で決裂してしまうと、その後のフォローが極めて難しくなることにあります。このため、本交渉の前の下交渉で、実質的に物事を決めてしまうわけです。そして、相手と地道に交渉することが、現場の第一線である係長の大事な役割なのです。
一般のビジネスシーンでも、まずは部下に話し合いをさせ、ある程度まとまった段階で、当事者が出てきた方がすんなりと話がまとまることがあると思います。また、そうしたできる部下は、どこの部署でも引っ張りだこになるのは、官民問わずだと思うのですが。
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