「ガス抜き」と「主張の確認」をしてから、反論する
前項のようなクレーマーに対して、「とにかく説得しよう」と相手の話が終わらないうちに、話を始めようとする職員がいます。若くて正義感の強い職員の場合、「こちらは間違っていない」と信じ込んでいることがあり、クレーマーに負けず劣らずヒートアップしてしまい、何とか論破しようとします。しかし、それは逆効果です。
そもそも、クレーマー本人が話を聞く態勢ではありません。まだ興奮状態なので、こちらが何を話しても無駄なのです。このため、ただ聞いているしかありません。しかし、何の反応もしないと、「俺の話をちゃんと聞いているのか!」と、これまた火に油を注ぐことになります。このため、時折頷いたり、「それは違います」などの簡単な返事をしたりして、嵐が過ぎ去るのを待ちます。とにかく、言いたいことを言ってもらいます。
相手にガス抜きさせることは、非常に重要なのです。相手が100%のMAXの興奮状態で話し続けているのなら、こちらから何を言っても無駄です。とにかく話を聞く態勢になるまで、相手側のパーセンテージを下げなければなりません。こちらが、何かを言い返すと、また興奮度が高まることもありますが、そうした上下を繰り返して、相手が話を聞く態勢となるまで、ガス抜きさせる必要があります。
いよいよ反論を開始する段階に
そして、ある程度のガス抜きが終わり、相手に少しでも聞く態勢ができれば、次に、相手の主張を確認します。相手が何を主張しているのか、客観的に把握するのです。まだ、この段階では自分の意見は言いません。
「○○さんは、私の説明が前回の内容と異なっている、とおっしゃるのですね」、「申請期限を過ぎていても、役所は申請を受け付けるべきだとおっしゃるのですね」など、本人の主張を整理します。これは、もちろん後で反論するための準備です。理不尽な内容であれば、それを取り上げて、後で追及できるからです。
こうした主張の確認を行うことで、相手自身に主張を整理してもらいます。クレーマー本人が、「この主張ではまずい」と気付くこともあります。そうすると、相手がトーンダウンしたり、主張をすり替えたりしてきます。そうしたことも、こちらでチェックしておき、反論の材料にします。
そして、いよいよ反論を開始する段階に入るのです。もう相手の主張は明確になり、また、反論材料は揃っていますので、それを相手にぶつけていくわけです。「法令で決まっていることを変更することは、できませんよね」、「先程、○○とおっしゃいましたが、今は△△とおっしゃっています。おかしくありませんか」と少しずつ外堀を埋めていきます。
ちなみに、クレーマーの主張や対応には、いくつかのお決まりのパターンがあります。