ここである程度の時間が経過すると、「このクレーマーは、このままでは帰らないな」ということがわかってきます。そして、同じようなやり取りが繰り返される膠着段階に入ってくると、次の段階を迎えます。
相手の怒りを再燃させるような言葉
第2段階は、主任などの上司である係長の出番です。ある程度の経験を積んでいる係長であれば、窓口でもめている様子を把握していますから、「そろそろ潮時かな」と思われる時に、「お客様、どうしましたか」と出ていきます。こうした時、クレーマーはだいたい興奮していますので、これまでの事情を自分視点で話してくれます。
係長は、「それは、○○ということですか?」、「職員が△△と説明したのですか」と事実を確認しながら、相手をクールダウンさせようとします。また、「どのように説明したの?」と同席している主任などにも確認します。もちろん、そこで職員に落ち度があることが判明することもあります。そんな時は、係長が謝罪して一件落着となります。
しかし、クレーマーであれば、だいたいは住民側が無理を言っていますので、「それはできないですね」と、相手の怒りを再燃させるような言葉をかけざるを得なくなります。すると、当然のことながら、クレーマーの心に火がつきます。そして、やはり、同じようなやり取りが繰り返される膠着状態になると、次の段階を迎えます。
「お客様からお話し願います」などと言い、無理やり話をさせる
第3段階は、課長の出番です。係長で手に負えなくなると、係長が課長のところへ行って、「すみませんが、窓口でトラブルになってしまいました。お客様の話を聞いてもらっても、よろしいですか」と課長の登場を願いでます。
もちろん、「そっちで、何とかやってよ」と嫌がる課長もいるのですが、トラブル経験が豊富な課長であれば、「仕方ないな」と出てきてくれます。そして、係長の時と同じように、「お客様、どうしましたか」と聞きます。
さすがに、クレーマーも疲れてきているので、「そいつに話を聞け」と職員を指名します。しかし、クレーマーの気力を削ぐことが大事な目的ですので、「いえいえ、私も初めて事情をお聞きしますので、お客様からお話し願います」などと言って、無理やり話をさせます。こうなると、さすがのクレーマーも嫌になってきます。
このように、役所では組織的・段階的にクレーマーに対応します。そして、相手の気力を削いでいくわけです。もし、最初から課長が出ていってしまうと、後がいなくなってしまうので、手数が減ってしまうのです。これは、民間企業でも使えると思うのですが、いかがでしょうか(どこで使えるのかは、よくわかりませんが……)。