西村 ところが残念ながら何も覚えていない(笑)。
山村 私のはね、逆行性健忘症というんですって。なんだかアホみたいでイヤやけど。
西村 事件の寸前も覚えてないんですか。
山村 少し前からね、逆行して。日航機が墜ちたときも、生存者が揺れてからいよいよ激突する瞬間の少し前からみんな意識がなくて、あとずっと眠っていたといってますけど、あれは眠っているのではなく記憶を喪失しているんですって。
西村 ビデオテープが始まる前にちょっと逆行するみたいに。
山村 そうなんです。本当は激突の瞬間まで意識していたんですが、一緒に消えてしまったんだそうです。私の場合も、1階でエレベーターを待ちながら郵便物とったりしたこと覚えていないんですね。
黒い人影を見たあとから記憶が無くなる
西村 殴られた瞬間の記憶はまったくないんでしょう?
山村 病院で目が覚めてうっすら思い出せるのは、6階の部屋まで行ったら戸が少し開いていたことなんです。上の娘が勤めに出ているんで、彼女が帰ってるのかと思って、「紅葉ちゃん?」といいながら部屋に入ったら、むこうのへやに人影が見えたんです。
西村 リビングのところね。
山村 その人の顔を見たような気がするんだけれどもわからなくて。その時、左の風呂場のほうから黒いものがパーッと来たような感じがして……、結局、それから意識がないんですね。
西村 男か女かもわからない?
山村 ええ。それもあとから考えてこんな状況じゃなかったのかと思うところが多くて。
西村 しかし、それだと、すでに鍵が開いてたことになりますねぇ。部屋の鍵はどこにあったんです。
山村 あとで娘にきいてみたら、私、鍵を持たずに6階の部屋へ行ったんですね。ホテルで泳ぐとき、失くしちゃいけないって娘に預けたんです。その事を2人ともすっかり忘れていて、娘は私が殴られて鍵も奪われたと思ったんです。
西村 すると鍵は犯人が予め持っていたということになる。
山村 6階ですから窓から入ることは出来ないですし、痕跡もないんです。あとで警察が調べたところでは、鍵が閉っていたというんです。