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2022/04/26

source : オール讀物

genre : エンタメ, 読書, , 歴史

事実は推理小説より奇なり

西村 ええッ。すると犯人は山村さんを殴ったあと部屋の鍵を閉めて逃げたってわけですか。

山村 そういうことになりますかしらねぇ。

西村 ここは重要なところですよ。いったい鍵は何本あったんです(笑)?

山村 みんなにそれをかれて困ってるんですけど、ほんとに誰にも渡してないの。私たち親子の分だけです。ただ、クルマのキーと一緒なので、そのまま駐車場に預けたりするので、コピーのチャンスはあったかも知れない……。それに警察は合鍵がなくても簡単にあくといってました。

西村 あのマンションじゃ目撃者もいないでしょうねぇ。

山村 夏なので、廊下側の窓があいてる部屋が多くて、隣りの部屋の人も、その隣りも私のハイヒールの音をきいてて、私が歩いて行くのを見ているんです。それなのに私が殴られてから1階の部屋へ駆け込む姿は誰も見ていない。裸足になってたのかなぁ。それにしても不思議なのはハイヒールが1階の入口にちゃんと揃えて置いてあったんですって。

西村 事実は推理小説より奇なりだなぁ。ハイヒールの音と部屋に行く山村さんの姿が目撃されているのに、ハイヒールは1階にあった。

山村 誰かが私の部屋に入って、私を殴って、鍵を閉めて、ハイヒールを1階まで持って行ってエレベーターの前に揃えて、それから逃げたってことになるんやから、なんやサッパリわかりませんわ。

西村 警察はなんていってるんですか。

山村 空き巣の居直りだって。

西村 警察には誰か届けたんですか?

山村 病院では不審傷ということで警察へ連絡したんですね。娘は転んだのかも知れないからといったけど、脳外科の先生が、何回も打って殺すぐらいのつもりで殴っている、殺人未遂じゃないかというので。

 ただ、その時は、名前を伏せたらしいんです。そのあとで届け、私が、知り合いの橋口警部補に、しっかり調べて欲しいと連絡したんです。橋口さんは、私の小説にも出てくる京都府警捜査一課の刑事さんで、つい、私、小説と混同して、彼なら犯人をあげてくれると思ったの。ところが彼は今年(1985年)の春から伏見署づとめになっていて、管轄がちがうから宇治署に連絡したんです。それで早速鑑識がやって来たり調書を取られたりしているうちに、新聞にデカデカと載っちゃった。

西村 山村さんはそれからが大変で、十何日間危篤状態になったというので心配したんだ。

山村 4日目から脳が腫れましてね、浮腫というんだそうですが、脳圧が上がって悪くすると死んでしまうんですね。それに内出血もして危篤状態になりまして、一時は呼吸が止ったんですって。

西村 凶器は何だったんでしょうね。矢沢美智子みたいにカナヅチ状のもので。

山村 金属バットみたいなものかしら。頭のほかに、右肩右腕に防衛傷っていうんですか、打撲傷がたくさんあって、首もムチ打ち症になっていますから。

西村 やっぱり犯人は殺意があったんだと思う。

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