1995年、福島県須賀川市で発生した「福島悪魔祓い殺人事件」。事件の現場となった家の主は、祈祷師をしていた江藤幸子。江藤は悪魔祓いをすると言っては、太鼓のバチで叩くなどして、次々と6人の信者を殺害した。
そして、ある信者の脱走によって事件が発覚。現場に踏み込んだ警察官たちが目撃した、想像を上回る“凄惨な光景”とは――?(全2回の2回目/最初から読む)
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信者の脱走に危機感を持った江藤。すでに死者が出ていたこともあり、家の中の状況が警察の耳に入れば逮捕は免れない。
彼女は、何としてもその事態を避けるために悪あがきをした。玄関を入って、奥にある和室には、6人の死体が寝かされていたのだが、その部屋には大量の脱臭剤を置き、信者たちには大量のタバコを吸わせるなどして、偽装工作に奔走した。彼女の家の風下にある家は、タバコの煙に迷惑していたという。
隣近所の住民たちは、少しずつではあったが、おかしな雰囲気を感じ取りはじめていた。前出の60代の男性が言う。
「彼女が警察に逮捕される、ちょっと前のことだったんだけどね。愛人の自衛官の父親がうちに訪ねてきたことがあったんですよ。『あの家に息子がいると思うんですが、連れ戻したいんです』と、私に言われても何もできないんだけど、何とかして連れ戻したかったんだろうね。こっちは、いると分かっているなら、早く連れ戻した方がいいですよって、言うしかできなかった。ダメだったんだな。それからしばらくして、事件が発覚したからね」
近隣住民が悩まされた「騒音」
男性は、事件現場となった家からの騒音にも悩まされたという。
「夜な夜な、誰かはわからないけど、家に出入りする足音が聞こえてくる。この辺は、田舎だから夜になると物音なんてしないから、何してんのかなって思ったよ。あと一番うるさかったのは、特に夏は網戸で寝てるから、太鼓の音だね。ドンドン、ドンドン、夜中でも関係なく叩いているんだよ」
都会であれば、間違いなく騒音で警察に通報されるレベルの話だが、男性は警察に通報したことはなかった。
殺人事件の現場となっていたことまでは、わからなかったという。