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「欧米の研究者から、日本のヤクザはマフィアと比較されがちですが、両者は根本的に違います。イタリアなどのマフィアはマフィアであることが分かっただけで逮捕されますから。したがって、彼らからすると『○○組』などという看板を掲げて堂々と存在しているヤクザが不思議で仕方がないようです。

 海外マフィアについて、研究者は裁判資料などの二次情報でしかアクセスできません。だから『ヒロスエは直接ヤクザに会えて一次情報を取れるのが羨ましい』とよく言われますよ」

山口組六代目司忍組長 ©時事通信

 欧米の研究者から特によくされる質問といえば、ヤクザと経済界との関係の激変についてだ。

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なぜYAKUZAは“必要悪”でなくなったのか

「少し詳しい研究者であれば、80年代まで日本のヤクザと経済界、ひいては政治の世界に至るまでが切っても切れない癒着関係にあったことを知っています。しかしその関係が暴対法で一変しました。日本社会が“必要悪”として利用し合っていたヤクザが、なぜ今になってここまで締め付けられているのか。そこに興味を持つケースがとても多いですね」

 民間人を巻き込み命を奪い合うほどの抗争をしたり、土地開発業者と組んで、強引な立ち退きを行ったり、無理矢理みかじめ料を繁華街の飲食店から回収したり、薬物の密売をしたり――。

 生活の安全をさまざまな犯罪行為によって脅かすヤクザは、1992年の暴対法の施行以降、衰退の一途を辿っている。

マフィアが関与した事件を解決するイタリアの国家憲兵「カラビニエリ」と逮捕者(中) ©getty

「海外のマフィアは存在が発覚するだけで逮捕されることから、日本のヤクザだけが厳しい状況にあるわけではありません。しかしマフィアには変わらぬ“勢い”はあります。ロシアのウクライナ侵攻でも、ドイツやフランスの犯罪組織が米国からの武器提供の中抜きをしているのではないかという疑惑があったり、ウクライナの難民、特に子供を人身売買のターゲットにしているという情報も入ってきたりしています。

 話は逸れますが、裏社会がない国家は危ないというのが私の持論です。例えば香港の民主化運動の折には、民衆を半グレみたいな集団が鎮圧していましたよね。アウトローたちが権力の尖兵となっている方がよっぽど危険です。

 いずれにせよ日本のヤクザは様々な意味で海外とは違ってかなり独自性がある。だから注目が集まっているんです」

 廣末氏が専門とする犯罪社会学的な関心のほか、映画などエンターテイメント業界も含めヤクザの生活や文化について興味を持っている人も多いという。