「ヤクザはふんどしをしめているの?」
「なぜ指を落とすの?」
「入れ墨をしているのはヤクザだけ?」
いま、海外の研究者や映画業界関係者などから、日本の「ヤクザ文化」について注目が集まっている。
ヤクザの不当行為を取り締まる「暴力団対策法」は、2022年で施行から30年を迎えたが、同法と、2010年以降に全国の自治体で施行された暴力団排除条例によってその活動は大きく様変わりした。さまざまなシノギを失ったヤクザは、高齢者を餌食とした卑劣なオレオレ詐欺などにも手を出し、逮捕者が続出している。
一方で、海外に広がっているのはこうした事実とは異なるヤクザ像だ。
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アメリカで論文『ヤクザの正当性』を作成?
《ヤクザは震災の時に炊き出しをして、被災者に寄り添った。犯罪者ではなく、男気のあるジェントルマンたちだ》
「このようにとらえている海外の研究者は多いですよ。海外では、ヤクザは男気のある任侠集団というイメージも強く、アメリカのある調査チームは『ヤクザの正当性』という論文を作成しようとしていたくらいです」
こう語るのは、龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員でノンフィクション作家の廣末登氏(52)だ。廣末氏は現職のヤクザに直接接触してフィールドワークを行う「日本で唯一」(廣末氏)の博士号を持ち、“ヤクザ博士”とも呼ばれている。
「ヤクザに直接アプローチしていることから、コンプラの問題でどこの教育機関も常勤で雇用してくれないんですよ(苦笑)。しかし、ヤクザと相対して調査をしていることが、海外の研究者やエンターテイメント業界からは重宝がられ、映画作品の監修や、海外の大学から講義への参加のお誘いなどもいただけるんです。最近では取材依頼も増えていて、海外からYAKUZAはエンタメ的にも学術的にも注目されていることをひしひしと感じます」(廣末氏、以下同)
4月1日には、世界的な名門、英オックスフォード大学で香港、中国、日本の組織犯罪に関するオンライン特別講義に登壇した。「Japanese Underworld Meltdown」と題された講義で、廣末氏は、ヤクザを取り締まる暴対法や各都道府県単位の暴排条例により風当たりが急速に強まったことで、ヤクザになる若者が減り、離脱者も増えていると報告している。
一方で、半グレなど新たな犯罪集団が形成されていることや、離脱者が銀行口座などを作れないことなどにより真っ当な働き口を見つけることができず、再び犯罪に手を染めている日本の現状なども述べた。
海外の人々は、ヤクザにどのような関心を持っているのだろうか。