昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

真のヤクザは小指を落とした“指物語”をしない

「私はやらないので詳しくは分かりませんが、欧米ではゲームを通してヤクザに興味を持つ人も多いそうです。『ヤクザはいつもふんどしを締めているのか』という質問に『格好つけたい時は確かに締めています。でも体中の入れ墨を見せる写真を撮るときくらいで、普段は普通のパンツですよ』といった感じで答えると、ちょっとがっかりした顔をされたことがありました。トイレとか、大変ですからね(笑)。

『指をなぜ落とすのか』という質問も多いです。ヤクザは基本的には自分ではなく、誰かの不始末、特に自分より目下の者の責任を取るという意味で指を落とします。海外にはこうした儀式的な“責任の取り方”は少ないようです。マフィアだと降格されたり、金を払ったり、あるいは殺されたりといった直接的な方法をとることが多いんです。

 指を落とすということは失敗したという証左なので、ヤクザにとっては恥ずかしいこと。だから落とした指を自慢げに見せてその経緯を語る“指物語”をする人は恥ずかしい。真のヤクザはそんなことを話しません、と言うと海外のみなさんは感心されていましたね」

ヨーロッパでも人気のゲーム「龍が如く」

 盃事で媒酌人が口で紙を咥えていることについて質問されたこともある。

「この紙は懐紙といって、武士文化のなごりなんです。元々は武士が刀の手入れをするときに、刀身に息を吹きかけて錆びさせないために懐紙を咥えていました。同様に盃事の媒酌人は、自分の息を盃にかけるのは失礼にあたるという考えから、自らの息が吹きかからないように懐紙を口に咥えている。日本人だと『なんか見たことある』という感じでスルーしてしまいますが、欧米の人々からすると極めて謎めいた行為なわけです」

 ほかにも、ヤクザならではの入れ墨も「ファンタスティック」なのだという。ロシアンマフィアやアメリカの海兵隊チームは、“仲間意識”から同じタトゥーを入れることが多い。しかし、ヤクザは個々人が「登り龍」や「唐獅子牡丹」、「般若」など、競うように派手な入れ墨を彫っている。

©iStock.com

ファンタスティックな入れ墨のワケ

「元々、日本では、江戸時代に島流しにあった人が識別のために腕に墨で線を入れられたのですが、これを隠すためにその上に和彫りを彫るようになったのが始まりだと言われています。他にも漁師や炭鉱夫といった命をかけて仕事をしている人たちが、事故に遭って死亡し、遺体がぐちゃぐちゃになっても誰か識別できるように墨を彫ったとも言われています。

 これが“悪”や“勇猛”であることの証になったわけです。そして時代を経るなかで、これらが粋というかお洒落として今の形になっていった。このような歴史的なストーリーは海外の方がとても好みますね」

 一方で、ヤクザ自体についての誤った認識も多い。

「先ほども言いましたが、ヤクザをジェントルマンだと考えている海外の研究者も多い。ものすごく美化されているんです。阪神淡路大震災の際、山口組が炊き出しをして被災者を援助したのは確かに事実です。しかし、それはさすがに現代日本の実態とは違う。現職のヤクザと会い、現場を見ているからこそ、その問題点の深刻さは痛いほど理解しています。

 これからも海外の方にも正しく理解してもらえるように発信を続けたい。ヤクザを辞めても更生するのが難しい日本社会の現状、そして今後の課題についても、しっかりと訴えていきたいと思います」

 ヤクザ博士の活動は続く。

この記事の写真(10枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z