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2022/04/30

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 社会, 働き方, 教育

幼稚園からの同意教育

「同意」に関しても、#MeToo を通して議論が盛んに行われるようになりました。例えば、女性が仕事を失ってしまうことを怖れて上司の性的なアプローチにNOと言えなかったシチュエーションなどは、表面上はYESであってもそれは「同意」を意味しないこと、またNOと言わなかったからといってYESであるわけではない、といったフレーズを耳にする機会が増えました。

 そして人間関係における「同意」とは、契約と同じようなものではないこともよく語られるようになりました。一回同意をしても、後から「やっぱり嫌だ」と気が変わってもいいし、それを互いに尊重し合う必要もある。そのためには、関係性のなかに相互のリスペクトがあることが大事だということも語られたのです。

 私の息子達が通う幼稚園では、2歳児のクラスから「同意教育」がありました。もちろんこの年齢における同意は、性的な同意ではありません。人間関係の中で自分の意思を表明すること、そして相手の意思を尊重することの重要性を学ぶための教えでした。

 例えば、2歳児の教室でお茶を入れるというアクティビティがありました。ポットを使って紅茶を入れ、友達に「一緒にお茶を飲まない?」と誘うアクティビティでしたが、そこで友達がYESと言っても、NOと言っても、どちらの答えもリスペクトすること、と教えられました。友達と経験を共有することだけでなく、NOと言われた場合は「仕方ない」とムーブオンすることが日常の学校生活の中で教えられていることに、親の私は驚きました。

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「これ、貸して」と自分が使っているものを友達が使いたいと言った場合も、「もう使い終わったから貸してもいい」と思うときもあれば、「まだ使っている」から断わりたいときもあり、どちらの答えでもいいと教えられていました。

 その教えに込められた意味を先生に尋ねると、友達とおもちゃなどをシェアするためには何よりも「自分が使っているものを使い終わるまで使ってもいい」「誰かに貸しても自分が必要なときには返してもらえる」と思える安心感が必要で、逆にもし「自分が使っているものが誰かに取られてしまうかもしれない」という不安が先行してしまうと、友達とのシェアが難しくなる、と説明され、なるほど! と思わされました。

 この教えを聞いてYES、NOの答えが意味を持つには、その答えを受け入れられるという前提が必要だと気付かされました。NOと言ってもいい、またNOと言われてもいい、という両者からの同意の受け入れの練習をさせてもらっている子ども達がうらやましく思えます。

「自分の身体や意思は自分のもの」と自分を尊重する力を持ち、「相手の身体や意思は相手のもの」とリスペクトすること。そんな真の意味の同意が、あらゆる人間関係のベースにあるべきなのではないかと思います。今一番必要とされている教育とは、自身と他者に向けたリスペクトを磨く教育なのかもしれません。

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