2017年に火が付き、日本でもその流れが見え始めた#MeTooムーブメント。トランプ大統領の就任や、娘のイヴァンカ・トランプへの批判から生まれたうねりについて、ハーバード大学医学部助教授の内田舞さんはどう見ているのでしょうか。(全2回の2回目/前編を読む)
本当の意味で男女共に女性の権利主張のサポーターになったのを見たのが、2019年の女子サッカーワールドカップ決勝でのシーンでした。
ワールドカップ優勝も男子チームの4分の1の給料
2019年女子サッカーワールドカップでアメリカチームが4度目の優勝を決めた際、男女混ざった観客からチームに“Equal Pay! Equal Pay!(平等な賃金を)”という掛け声がかけられました。
掛け声の背景には、アメリカ女子サッカー代表選手28人が男子選手に比べて4分の1の給与しか支払われないことが問題だとして、男子選手と同等の給与を求め、ワールドカップ数か月前にアメリカサッカー連盟を訴えたことがありました。
男子サッカーに比べて女子サッカーの方が注目度が低く、興行収入もさほど見込めないのではと思われるかもしれませんが、実はアメリカではそうではないのです。例えば2019年の女子サッカーワールドカップ決勝戦は、男女通じたアメリカのサッカー試合史上最高の視聴率を叩きだし、その数字は前年の男子ワールドカップ決勝の倍以上でした。2016-2018年にかけての試合のチケット収益も女子チームが男子チームを上回り、また2019年の女子代表のユニフォームの売り上げはサッカーユニフォーム米国史上最高額を記録しました。
4度のワールドカップ優勝を果たし、4度の五輪優勝を果たしたアメリカ女子サッカー代表は、商業的にも男子代表チームを大きく上回ったにもかかわらず、給与は男子選手の4分の1にとどまっていたのです。
給与の問題に加え、さらに試合や合宿のための移動手段においても女子選手は劣位に置かれていると訴えました。男子チームにはプライベート飛行機が予約提供されるものの、女子チームにはそういった手当てはなく、スタジアムの芝の質も男子スタジアムよりも劣ることなど、様々な点でEqual(同等の待遇、平等)ではないことを、女子チームの代表選手が性差別だと公式に訴えたのです。
長い訴訟を経て2022年2月、アメリカサッカー連盟は女子選手に過去選手たちが得られたはずの給与も遡及的に、そして以後は男子選手同等の給与を支払うことを発表しました。