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日本もアメリカも前進し続けなければならない

「アメリカの方が日本よりも性犯罪の報告件数が多いから、アメリカからの考察には耳を傾ける必要がない」というコメントを受けることがありますが、日米の性犯罪報告数の比較においては並列して比較はできません。性交同意年齢が日本では13歳で、アメリカでは州ごとに違いますが16-18歳なので、例えば13歳の子どもが関わる性交はアメリカでは全て性犯罪として検挙される一方、日本ではされません。また性被害の報告のしやすさという点でも日米は異なり、厚労省も小児が関わるケースに関して「警察による性的虐待の検挙件数は児童相談所への性的虐待相談件数の13.3%に過ぎない」と発表しています。

 しかし、性犯罪の数の比較は論点外のことです。アメリカの性犯罪が日本より多くても少なくても、アメリカでも日本でもジェンダー問題、同意教育、メディアの表象における問題点は変わらず存在し、社会として議論しなければならないのです。

 私が指導する2021年度入学のハーバードメディカルスクール(医学部)1年生は6割が女性です。ハーバード医学部の授業で、女性であることで医学部入学試験の点数が組織的に減点される日本の医学界のジェンダー問題に関して議論をしたことがありました。私が医学部の同級生から「医師は力仕事だから女性には向かない」と言われたことを話すと、学生からは「ナースの仕事の方が力仕事なのでは?」という声があがりました(学生の頃は知らなかったのですが、3児の母になった今私がこの同級生に伝えたいと思うのが、「医師の仕事よりもずっと力仕事なのは家事育児である」ということです)。

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 何よりも印象的だったのが、授業を共にリードした90代の白人男性内科教授が「自分が医学生だったときには女性は数人しかいなかったことに比べたら、今年女性が6割入学したことは大きな進歩だ。しかし、ハーバードもここまで進歩したからもう、進歩しなくていいわけではなく、まだまだ進化しなければならない」と発言したことでした。日本もアメリカもまだまだ進化しなければならないのです。

 性被害や性同意に関する議論ができるような地点まで前進したこと自体が大きな進歩であり、国際的にジェンダー意識の進化の兆しが見えているのかもしれません。私達の子ども達が大人になるころや、その先の孫の世代には、女性らしさ・男性らしさの呪縛から解放され、皆の人権の確立に繋がるよう、始まったばかりの#MeToo議論が世界中で続けられることを祈っています。