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 なのでDさんはジャニーズのBL作品への進出を大歓迎していると言います。

「私がBL作品を好ましく思うのは、女性不在の心地よさがたまらないからです。競争だの劣等感だのから完全に解き放たれて、純粋に酔えるのがとても嬉しい。

 だからコンサートの演出でも、女性ダンサーを使わずドレスを着せたマネキンや椅子を恋人に見たてたり、時にグループの他のメンバーやジュニアが女装して相手役を務めるのは、私のようなファンの胸をざわつかせない、ありがたい配慮だと思っています」(同前)

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 好きな人が共学の学校に通うのは心配だけど、男子校なら安心するといった心境に近いようです。

「考えすぎじゃない?」って言われそうな小さな発見こそが醍醐味

 ジャニーズファンを俯瞰して「ファンの中には2種類いる」と自説を主張するのはEさん(20代)です。

「ファンの中にはコンサートで自分がファンサされるのが嬉しいタイプと、とにかくジャニ同士のからみを観察するのが好きなタイプがいると思います。自分は後者で、一方的にステージを眺めて、お気に入りのあの子とあの子は意外と仲がいい! みたいな発見をすると高まります。コンサートにも、そういう作為のない発見を求めてます。人によっては『考えすぎじゃない?』って言われそうな、関係性というごちそうを勝手に見いだしてついばむ。それこそが醍醐味だと思っています」

宮田俊哉 Johnny_s netより

 Eさんはジャニーズのコンサートに初めて参加した際、MCで前に出られず躊躇するジュニアを、後ろにいたジュニアがそっと前に押し出してやる瞬間に遭遇し、雷に打たれたようにときめいたのだそうです。このエピソードには「わかる!」と共感する方も多いように思います。

 お話を伺ったみなさんに共通していたのは、「あまりにあざといものはちょっと……。ただその作品が推しの成長につながるものならBLでもそうじゃなくても歓迎」というご意見でした。

 時代の流れとともにBL演出を巡る社会の雰囲気も変化していて、これまでアリだったものがナシになったり、またその逆も十分にありえる昨今。BLに限らず、新しい表現を取り入れるときは、それがどう受け止められるのかに思いを馳せてもらえたら、ジャニーズにとってもファンにとってもよい結果につながるのではないかと思います。

玉森裕太 Johnny_s netより

 ともあれ、推しが歌い、踊り、学び、仲間と切磋琢磨する——、そんな一生懸命に過ごす普通の日々こそが観るものにとっては最高のご褒美であり、その中に立のぼる薫りを各々が胸の内で味わう“聞香”的な楽しみこそ、ヲタにもたらされる格別な愉悦なのでしょう。

 ジャニーズが生きているその世界はすでに特別な物語。てらうことなく本業に邁進し、惜しみなく芳香を放っていただけたら誠に嬉しい限りです。