「男性身体への否定」が女性の違和感の正体?
――それは作品の内容に関らずあるんですか?
牧田 和姦であろうと強姦であろうと関係なくありますね。これが、女性を一方的に「見られる対象・まなざしの対象」にしてしまっているのではないかと思うんです。男性向けエロマンガだと、性行為は男女がともにする双方向の行為ではなく、女性を性的に見るための方法でしかないんです。女性が男性向け作品に違和感を持つとしたら、この「一方的な視線」に原因があるかもしれません。
――統計をとっているからこそ、男性向け作品の画一的な部分に気づけた。
牧田 そうかもしれません。男性向けエロマンガは、たとえば「清楚な女性を性的に堕とす」などといった“禁忌への挑戦”という意味合いがあるからか、大きな変化があまりないんです。性行為も、そこへ至る物語も、あくまでファンタジーとして描かれています。今でもブルマが生きていますし、制服でもセーラー服が人気です。
たとえば、TLだと主人公の設定がティーンから成人に変わってきています。それは読者の高齢化もあるとは思いますが、「10代に手を出す男って実はクズじゃね?」という読者の意識の変化が影響しているように感じます。こういった意味で、社会に起きているジェンダー意識の変化は女性向け作品に如実に表れている印象です。
2018年版を最後に最新の統計を出せていないのですが、活動を再開して統計を取っていくうちに、男性向けエロマンガにもそういった部分に多様性が出てくれることを期待しています。
――エロマンガには、私たちのジェンダー観が表れている面があるんですね。
牧田 エロマンガにはいろんなジャンルがあって、それぞれ読者の性に対する考え方が反映されています。統計を見てもらうことで、自分では気づかなかった無意識の性意識や世の中には様々な性に関する嗜好があることに気づいて、それらを認め合えるようになったら理想的だなと思います。