テレビ各局のリポーターがこぞって取材に押しかける東京・練馬区にある生鮮市場「スーパーアキダイ」。名物社長の秋葉弘道氏の姿をご存じの方も多いだろう。しかし、同氏が普段どのように生活し、仕事に取り組んでいるのかはあまり知られていない。
わずか一代で従業員200人を抱える企業へと成長させた敏腕社長の意外な素顔とは。秋葉氏の著書『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』(扶桑社)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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青果は「モノがいいときほど安い」
実は、青果はモノがいいときほど安い。
なぜなら、生産地で青果の成育がよく、順調に出荷された結果、市場への供給量が増えて価格が低下するからであり、いわば産地から野菜や果物が無駄になることなく出荷された証とも言える。
ただ、豊作で収穫があまりにいいと供給量が増える反面、需要が急に増えることはないので、値崩れしてしまう可能性も……。こうなると、生産者はもちろん、小売りをする僕ら八百屋も厳しい状況に陥ることになりますが、品質のいいモノが安くなることに変わりはないのです。
これに対して、2021年のように、近年、夏の天候不順が多くなり、収穫量が減るのに加えて、作物の病害も広がり、市場への供給が急減することが珍しくありません。こういうときは当然、青果物の品質は悪くなるけれど、供給量が減少するので価格は高騰する。
モノは悪いのに髙いという、一見矛盾した現象が起こりがちです。
こうした負のスパイラルのような状況は、日頃から市場へ足を運び、仲卸会社の売り子さんと関係を築いていれば、価格の高騰を事前に察知できます。売り子さんになるべくいい産地の商品を卸してくれるようにお願いしたりして、十分な仕入れに努めますが、最悪の場合、生産者が出荷停止することもあります。それでも、お客さんに「天気が悪いから、モノが悪くても我慢して」などとは口が裂けても言えません。