生鮮食品である青果物を扱う八百屋は、同じ条件で商売していることは一日たりとないと言っていいでしょう。では、天候の影響を受けにくい室内栽培の野菜なら、安定して仕入れができるかといえば、同じ室内で作っているのに品質のばらつきが大きいことはよくあるんです。
たとえば、カイワレ大根や豆苗がよく売れるからといって出荷のサイクルを早めると、芽が3分の2しかないなんていうこともある。逆に売れていないときには、芽が伸びきっていて品質が悪かったりする。天候をはじめ、さまざまな要素に青果物の品質は左右されるのが常なんです。
仕入れは一日1000万円!?
市場で品物を見て回って、掘り出し物があれば仕入れ、前日に事前注文した商品を引き揚げて、午前8時過ぎには店に向かいます。
仕入れる量は日によって違うけれど、少なくても一日700万円。多いときは1000万円になります。市場では商品を積んだウチのトラックが「まるで巨大な壁のようですね」なんて言われるくらい仕入れは多い。
自分でも「こんなに買って大丈夫かなぁ……」と思う日もあるけれど、欲しい商品だけ仕入れていたら売り子さんとの関係を損なってしまうし、これもお付き合いだと思っています。何より、仕入れの量が不十分で早めに売り切れてしまうとお客さんに迷惑がかかるので、それだけは絶対に避けたい。
そんな理由もあって、アキダイでは毎日かなりの量の野菜や果物を買い入れているのです。よく「儲かっているでしょ?」なんて言われますが、ウチは大量仕入れの薄利多売。
市場への仕入れ代金の支払いは、ウチの場合は仕入れた3日後の「3日目払い」。支払い期限が長ければ支払いは楽かもしれませんが、長くなるほど安く仕入れることができなくなるので、青果信用組合にこのサイクルで代払いしています。だから、市場に行くときには、昔のように現金を持ち歩くことはなく、急な支払いの必要があるときは小切手を使います。
余談ですが、日本の市場といえば、大量の品物を積んで細い通路を軽やかに走る「ターレー」を思い起こす人も多いでしょう。特に、豊洲に移転する前の東京中央卸売市場・築地市場は手狭だったので、ターレーが大活躍していました。アキダイも昔はターレーを所有していましたが、実は運転がなかなか難しく、転んでしまったことがあるほど。一時代を築いたターレーですが、現在の青果市場ではフォークリフトが主流になっています。