「やっぱり自分はこういう有事の現場が向いているんだな」
たしかに、現地で宮嶋さんが自身を写した写真は、過酷な状況に疲弊していてもどこか活き活きして見える。
「出発前はあれほどためらっていたのに、現地に入るとそれが嘘のように頑張ってしまう。『やっぱり自分はこういう有事の現場が向いているんだな』とつくづく思いました。60歳になってこれが最後の戦争取材だと思って向かったのですが、連休明けにはまたウクライナへ戻ろうと思っています」
しかし今回、ウクライナに入った日本メディアはとても少ない。ある通信社は、ブチャのプレスツアー前日に現地スタッフに出国を命じたという。スマホが普及し、メディアが現地に入らなくても現場の写真が無数にネット上にアップされていることもその理由の1つと言われている。
「たしかに、こんなに写真や動画が溢れる戦争はこれまでありませんでした。それはこの戦争の特殊性です。それでも、プロが現場に入らなければわからないこと、撮れないものは確実にある。戦場で身を守る術を知らなければ入れない場所があるし、知識がなければ目の前にある景色の意味が分かりません。壊れた戦車を見て『ジャベリンに上からやられたな』とか『ウクライナ兵がアメリカ製の最新銃を持っているぞ』ということが分からなければ写真の撮り方も変わるし、そもそも撮らないかもしれない。自分が猫を撮っているところを海外メディアに撮られて少し話題になりましたが、ウクライナ人が犬や猫を本当に大事にする人たちであることを知っているかいないかで、あの写真の意味だって大きく変わるんですよ」
プロが現場で起きていることを正確に記録することにこだわる宮嶋さんだけに、日本の大手メディアの慎重な取材姿勢には不満を感じているという。
「実のところ、ウクライナにいた1カ月半で本当の意味で命の危険を感じた瞬間はありません。同じ戦場と言っても、イラクやアフガニスタンとは全く違います。実際、アメリカのジャーナリストはかなりの数が入っていました。それなのに、日本メディアがなぜリビウやキーウにすら来ないのか理解できませんでした。21世紀最悪の戦争犯罪が行われている現場で、その悲惨さを伝えることに意味があるんじゃないですか」