新型コロナウイルスによって、日本のこれまでの「当たり前」がいくつも崩れたが、その最も大きいものはリモートワークの浸透だった。それまで仕事とは「会社に行かなければできないもの」と捉えられ、出社マストの文化が長らく日本の企業を支配してきたが、外出制限の中で仕事は環境さえ整えば在宅で可能になった。その変化は日本人の仕事観を大きく変えようとしているだけでなく、これまで子育てや介護を主に担ってきた女性たちの働き方やキャリア観にも大きく影響を及ぼしている。(全2回の1回目/続きを読む)
変わり始めた女性たちのキャリア観
富士通の川崎タワー総務部マネージャー、山岸綾さんは2021年4月にマネージャーに昇進した。2001年に新卒で就職した後、複数の企業を経て富士通には2006年に入社。2人の子どもを育てながら、マネジャーになるまでは短時間勤務制度を利用して働いていた。
山岸さんが管理職を目指そうと思えたのは、コロナによってリモートワークという働き方が社内に定着したからだ。それまで管理職、幹部社員は夜遅くまでの残業が当たり前という働き方を横目で見ながら、子育て中で時短勤務を選択している自身には「管理職なんて他人事」と思っていた。それが「家で働ける」「ちょっとした隙間時間にもパソコンを広げて仕事ができる」ということが可能になったことで、「私にもできるかも」と思えるようになったという。
「子育てに手がかからなくなったときに、私はもっと仕事したいという気持ちはあったのですが、一方で、責任のある仕事は私には無理だと子育てを言い訳にして諦めているところもありました。それがリモートワークが定着して通勤時間もなくなり、時間を理由にできなくなった時、自分のキャリアを真剣に考えたんです」(山岸さん)